東北大学の塩貝純一助教、塚﨑敦教授らのグループは超伝導物質であるセレン化鉄を極薄膜化する技術を確立しました。高温超電導を理解するための新たな実験ができるようになると期待されます。

 極薄膜、つまり2次元状に広がった物質には、3次元の物質とは全く異なる性質が現れると考えられています。例えば超伝導物質であるセレン化鉄(FeSe、Seは34番元素)は3次元状の塊の状態では、超伝導状態にするのに-265℃まで冷却しなければなりません。一方で2次元、極薄膜状のFeSeは-208℃で超伝導状態になることが分かっています。しかしFeSeは大気中で劣化しやすく、超伝導状態と膜の厚さの関係を調べることは非常に困難でした。

 これまでのFeSe極薄膜は、塊から粘着テープで表面を剥がすことで作られていました。これに対して、グループが新たに開発した方法ではまずやや厚め(数十ナノメートル程度、1ナノメートル=0.000000001メートル)のFeSeの板を用意します。これを特殊な液体に浸して電圧をかけると板の表面からFeSeが溶け出し、どんどん薄くなっていきます。最終的には原子一つ分の厚さにすることが可能なうえ、自由な厚さの試料を作製することも容易です。

 これによって超伝導と膜の厚さの関係を詳細に調べることが可能になります。絶対零度近くまで冷却しないといけなかった超伝導現象ですが、研究が進むにつれてより高い温度での超伝導状態が実現できています。まだ超伝導のメカニズムは完全に解明されていませんし、室温超伝導という夢の実現まではまだ遠いのが現状です。しかしこうした研究の積み重ねが室温超伝導という夢の実現のための一歩となることでしょう。

出典:【東北大学】鉄系超伝導体の新たな極薄膜化技術の確立

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