尚美学園大学(埼玉県川越市)が、様々な業界人にインタビューした「プロが語る仕事論」の記事をお届けします。「芸術」「社会科学」「スポーツ」というユニークな分野の組み合わせを持ち、これまで多方面に人材を輩出してきた同大学から、各分野のプ口が仕事について語る記事が、学生に向けて発信されました。仕事の多様性と可能性の広がりを体現された方々の話には、未知の未来を持つ学生にとって将来のヒントとなるメッセージが込められていました。そのメッセージは学生に限らず様々な人に意義があると思います。そこで、全6回にわたり本記事を配信します。今回お話しを伺ったのは、映画をはじめテレビドラマ、CMなどの監督として活躍する石橋夕帆さんです。
【PROFILE】MOOSIC LAB 長編部門作品『左様なら』で長編デビュー。長編2作目『朝がくるとむなしくなる』が大阪アジアン映画祭インディ・フォーラム部門にてJAPAN CUTS Awardを受賞、フランスで公開予定。長編3作目『ひとりたび』が釜山国際映画祭コンペティション部門に正式出品、劇場公開を控えている。ドラマ演出作に『彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる 2nd Stage』(MBS)同棲編・メイン監督、『きみの継ぐ香りは』(TOKYO MX)全話監督、『タカラのびいどろ』(CBC・BS朝日)メイン監督など。
曲から思いついた物語を映像化したい。
友人たちの協力で、映画を初監督。
映画監督を目指す前は、ずっと女4人でバンドをやっていたんです。大学2年の途中でバンドを解散することになったんですが、ライブが1つ残っていました。もうみんなでライブする空気でもなかったので、知り合いをゲストに呼んでライブをしました。その時につくった曲のイメージから1つの物語を思いつき、「映画にしたいんだよね」って周りに言ってたんです。最初は半信半疑だった友人たちも「映画を撮るね」と断定系で話すようにしたら協力してくれるようになり、3年の夏、みんな自腹でロケ地の長野に来てくれて合宿して撮影。それが初監督作品になりました。そこから映画に興味が湧き、4年生になった時、ニューシネマワークショップという週2で通える映画学校に入学しました。学校内での脚本選考会で選出されて実習作品の監督を務める事ができ、作品づくりをする中で、演出をやりたい気持ちが強くなって、監督を目指すと決めました。
バンド活動同様、主体的に映画に取り組めるよう
就職せずに、自主制作から監督を目指す。
映画監督になるための絶対的な道筋はないんですが、パターンは5つあると思います。①映画の現場で助監督として経験を積む。②テレビ局や制作会社でADを経てディレクターになる。③自主制作して映画祭で受賞する。④MVや広告の演出で知名度を上げる。⑤舞台の作・演出からチャンスを得る。私自身は、映像制作の会社に入って「仕事」として他の監督の作品づくりに貢献するよりは、バンドの時みたいに自分主導で動くほうが性に合うと思い、就職はせずに活動を始めました。当時は自主映画での功績が認められて商業映画を撮るようになった監督の方もけっこう出てきていたので、私もその方向でアプローチすることにしました。その代わり、「年に最低1本は映画を撮って、映画祭で成果を出す!」と心に決めて自主制作に取り組みました。資金面ではとても苦労しましたが、作品が映画祭で賞をいただくこともできて、長編が撮れる監督になることができました。

大学などで理論やスキルを学ぶことに加え、
映画を考えながら観ることで表現手法を学ぶ。
美術系の大学なら、映画理論や映画史、機材の使い方、演出などを学べるのが良いですよね。私の場合は映画学校で学んだこと以上に、自主映画をつくる中で、私より経験のある制作スタッフさんから映像制作のテクニックを教えてもらいました。監督としてスキル以上に大切なのは、「自分がどういう作品をつくっていきたいか」を考えることです。作品が誰に、どのように届いてほしいか。それを表現するためには、どんな視点を持つべきか。それらを考えた上で、映像以外の様々な知識や経験を培うことも必要です。映画を学ぶのに一番手軽で、効果があると思うのは「映画を観て学ぶ」こと。私は、その作品で描こうとしているテーマに対して、どんな表現を選択しているかを一番気にして観ています。こういう感情を描きたいんだろうなと感じたら、じゃあ、あのカメラワークで良かったのか?あのセリフで伝わるのか?違和感を拾って、「自分だったら?」と考えます。
スタッフやキャストがもたらす化学反応で、
想像を超えるものが現れる瞬間に感動。
映画制作は体力的につらいこともあるんですけど、何だかんだ言って、私はずっと楽しんでやってこられたなと思っています。もう無理!と思っても、完成すると忘れちゃうんですよ、楽しかったとこだけ残って。「よし、また次の作品を撮ろう!」ってなります。作品がゼロからどんどん形になっていくことは、何度経験しても本当に楽しいです。スタッフ、キャストのみなさんが様々なアイディアを持ち寄ってくださって化学反応が起きます。自分の脳内にあったものが想像を超えて目の前に現れる瞬間は、本当に感動します。作品を撮ると毎回、様々な学びをくれます。「もっとこうすれば良かった」と思うことは多々あるので、その反省を活かして次の作品に繋げていくことが、とても大事だと思っています。映画は一人ではつくれません。周りにいてくれる人たちと誠実に向き合いながら作品づくりに励んで、映画監督を目指していただけたらと願っています。
【仕事の相棒/ショルダーバッグ】撮影の現場では、いつも身に着けています。飲み物や貴重品、その日の撮影スケジュール表、ペン、あとは体のコンディションを守るために頭痛薬やアレルギー薬も入れています。私は体調が悪い時はお腹を温めると大丈夫になりやすい人なので、貼るカイロも入れてますね。
