畿央大学の林田一輝客員研究員(宝塚医療大学助教)と森岡周 教授らの研究チームは、偶然発見された特殊な視覚フィードバックを用い、健常若年者が歩行中に身体軽量感の錯覚を誘発できる可能性について報告した。
身体が重たいと感じると身体活動量が低下し、心身の健康に悪影響を及ぼすことがある。その原因とされる感覚運動不一致は、脳内で予測されたフィードバックと実際のフィードバックとの間のわずかなズレ(不一致)の認識を指す。以前研究チームは、感覚運動不一致を実験的に扱う方法「視覚遅延フィードバック」により歩行中にも身体重量感を実験的に誘発できることを報告。しかし、身体軽量感を報告する者も存在し、その理由は不明だった。
研究チームは以前、実験後に実験参加者から「遅れが大きくなりすぎると少し未来の自分を見ている状態になる.その時に身体が軽く感じる」と報告された。これにより、偶発的に作りだされた実験状況が身体軽量感錯覚に寄与する可能性が発覚。つまり身体軽量感の錯覚は、「主観的に先行するフィードバック」と、予測されたフィードバックとの間の不一致によって誘発される可能性があると研究チームは提案した。
実験により、30名中9名で先行フィードバック時に明確な身体軽量感の錯覚が誘発したという結果が報告された。報告では、主観的先行フィードバックの生成方法、身体軽量感錯覚誘発のメカニズム、錯覚の応用可能性を記載。フィードバック間のわずかな誤差の知覚がポジティブな効果を生む可能性も論じている。この報告は予備的・探索的段階だが、この新たな錯覚は医療・リハビリテーション分野や拡張現実技術などに貢献する可能性があるという。
