関西学院大学の研究グループは、第3級アルキルアミンの分子内で、窒素原子から離れた特定の位置(γ位:窒素原子から数えて3番目の炭素)のC–H結合を選択的に変換する新手法を開発した。
窒素原子に炭素を含む鎖(アルキル基)が3つ結合した第3級アルキルアミンは医薬品分子の約26%に含まれ、アルキルアミン構造を出発点として自在に官能基を導入できれば、新薬候補の探索を効率化できる。そのため、分子中に多数あるC–H結合のうち、特定の位置だけを狙って変換する「位置選択的C–H変換」は効果的な手法となる。しかし従来の手法では、位置選択的な変換が困難だった。
研究グループは、長らく有機合成で十分に活用されてこなかったディストニックラジカルの⼀種であるα-アンモニオラジカルが持つ「水素原子を引き抜く力(HAT能)」の高さを、遠隔位選択性へと転換する戦略を構想した。
具体的には、第3級アミンをジハロメタンで変換したハロメチルアンモニウム塩を前駆体として用い、光レドックス触媒による一電子移動でα-アンモニオラジカルを発生させる。すると、このラジカルが「分子内1,5-水素原子移動(1,5-HAT)」(分子内で水素原子が離れた場所(5原子先)へ移動する反応)と呼ばれる現象を生じて、ラジカル部位の分子内移動が実証された。これにより、窒素原子のγ位にあるC–H結合からのみ選択的にラジカル(反応の起点となる活性種)を発生させ、そこから狙った官能基導入へつなげることに成功した。
今回の成果は、第3級アルキルアミン構造を迅速かつ精密に改変できる技術につながるもので、既存医薬品の誘導体合成を効率化し、創薬研究を加速させることが期待されるとしている。
論文情報:【Nature Synthesis】Taming Distonic Radical Cations for Precise γ-C–H Functionalization of Alkylamines
