九州大学大学院の馬奈木俊介主幹教授の研究室は株式会社 aiESGと共同で、熊本地震を対象とした分析により、冷房喪失が被災高齢者の30日間の死亡リスクを上昇させる可能性を示し、必要な電力・冷房資源を定量的に推計した。

 近年、気候変動に伴う猛暑の頻発により、地震等で冷房機能を失った高齢者など脆弱な人々の健康リスクが深刻化している。しかし、災害対応は発生後の復旧に重点が置かれ、事前の防災・減災投資を促す仕組みは十分ではない。

 研究グループは今回、報告・データを空間的に統合し、住宅喪失から高齢者曝露、冷房需要、死亡リスク上昇までを一連のモデルとして推計し、AI・空間データを活用して、災害時に優先的に支援すべき地域や必要なインフラ量を可視化する枠組み構築を目指した。

 研究では、熊本地震を対象として、衛星観測データ、国勢調査メッシュ人口、建物・避難所情報、自治体の被害報告、気象観測データ等を統合し、建物の曝露量と震源からの距離に基づいて3万6657の国勢調査秘匿処理グループへ配分、その上で、関連する65歳以上人口、その30日間の冷房ニーズ、電力需要、そして同一の屋外気温の下での「有効な冷房あり」と「なし」の死亡リスク差を推定した。

 中央シナリオでは、機能的に喪失した住宅は303.5棟、影響を受ける高齢者は約246人と推計された。これらの保護には、ピーク冷房能力34.6kW、1日あたり622.5kWhの電力が必要となる。有効な冷房がない場合、モデル上の30日間死亡負荷は5.34%上昇する。

 研究グループは、災害時の迅速な支援だけでなく、AIと空間データを活用して脆弱性の高い地域を事前に特定し、防災投資やインフラ分散を促進することの重要性を提言している。

参考:【九州大学】熊本地震:被災高齢者「冷房を失うと30日間の死亡リスクが5.34%上昇」―衛星・国勢データを統合し、緊急冷房の必要量をピンポイント推計-(PDF)

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