東京理科大学の研究グループは、授業スライドの情報を教員の説明に合わせて少しずつ表示する「累積提示法」が、学習者の視線を適切に誘導し、学習効果を高めることを明らかにした。

 学校や大学の授業では、教員がスライドを示しながら説明する場面が多い。音声による説明と画面上の視覚情報を組み合わせた学習は効果的とされる一方、最初から完成版のスライドを提示する「一斉提示法」では、学習者は「いま説明されているのはどこか」を自ら探す必要がある。

 これに対し、最初からスライドの内容を全て見せるのではなく、説明の進行に合わせて情報を段階的に追加する「累積提示法」は、学習者の理解を助け、テスト成績を向上させることがこれまでに報告されていた。しかし、その効果がどのような過程で生じるのかは明らかになっていなかった。

 本研究では、累積提示法が学習効果を高める仕組みを明らかにするため、日本人大学生40人を累積提示法と一斉提示法の2グループに分け、教員の音声説明は共通の約20分の授業動画を用い、スライドの提示方法のみを変えて学習中の視線の動きを計測した。

 その結果、学習後テストでは累積提示法で学んだ学生の得点が有意に高かった。また、視線計測の結果、累積提示法では、一斉提示法と比べて学習者の視線が教員の説明に対応する箇所へより早く向かい、より長くとどまることが確認された。
一方、授業やテストの難しさに関する実験参加者の主観的な評価には、スライドの提示方法による有意な差は認められなかった。つまり、学習者自身が必ずしも「学びやすくなった」と感じなくても、学習成績や視線の動きには違いが現れる可能性が示された。

 本研究により、累積提示法は学習者の視線を適切に誘導することで、学習効果の向上に寄与する可能性が示唆された。この成果は、特別な機器や新たな教材を必要とせず、スライドの見せ方を工夫するだけで学習者の注意を適切に導けることを示すものであり、学校・企業研修・オンライン学習などさまざまな教育現場で教材設計の改善に活用できることが期待される。

論文情報:【Journal of Computer Assisted Learning】Cumulative Presentation Enhances Learning Outcomes by Directing Learners’ Visual Attention

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