現行の調査書は裏面の情報量が増え、高校現場の負担にも

高大接続改革による様式変更で、特に調査書の裏面に記載する情報量が増えて高校現場の負担も増しました。現行の様式では、調査書裏面の「指導上参考となる諸事項」が拡充され、記入欄が次の(1)から(6)の6項目に分類されています。

(1)学習における特徴等
(2)行動の特徴、特技等
(3)部活動、ボランティア活動、留学・海外経験等(具体的な取組内容、期間等)
(4)取得資格、検定等(専門高校の校長会や民間事業者等が実施する資格・検定の内容、取得スコア・取得時期等)
(5)表彰・顕彰等の記録(各種大会やコンクール等の内容や時期、科学オリンピック等における成績、時期、国際バカロレアなど国際通用性のある大学入学資格試験における成績・時期等)
(6)その他(生徒が自ら関わってきた諸活動など)

 

従来は上記の複数項目をまとめて記入する様式でしたが、各項目別に学年別に記入蘭が設けられています。これに加えて、「総合的な学習の時間の内容・評価」、「特別活動の記録(ホームルーム活動、生徒会活動、学校行事)」の記入欄もあるため、これまでと比べて格段に記載される情報量が増加しました。さらに「備考」欄には、大学が指定する特定の分野(保健体育、芸術、家庭、情報等)の特に優れた学習成果を上げたことを記載するよう大学が募集要項で求めた場合には、高校はこれにも対応しなければならないことになっています。調査書の情報量が増えれば入学者選抜で多面的・総合的な評価が行われると想定していたのでしょうが、今のところ想定通りになったという話は寡聞にして存じません。

 

調査書の枚数も1枚に戻り、裏面もほぼ以前に戻る

では、通知で示された調査書様式はどのように変更されるのでしょうか。まず、調査書の枚数ですが、現行は任意、つまり何枚でも良いとされています。豊かな活動歴のある生徒の長所を複数枚にわたって丁寧に記載することもできるようになっていますが、これが表裏の両面1枚と元に戻りました。複数枚というのは、調査書を受け取る側にとっても使いづらいのが現実です。この他の変更点として、前述の「指導上参考となる諸事項」は学年別に(1)から(6)の6項目を記載する書式が、また変更されてこの6項目の分類がなくなり、学年毎に記入欄が設けられただけのシンプルな形式になります。かつて項目別に記入欄が分けられた時には、総合型選抜・学校推薦型選抜の際に、より丁寧に評価しやすくなるという触れ込みでしたが・・・。しかも、「要点を箇条書きするなど、その記載内容を必要最小限にとどめる」ようにとの指示がなされています。さらに、生徒会や学校行事などの「特別活動の記録」蘭は、文章ではなく「○」印を記入するだけになります。この辺りの変更は批判的に受け止められるかも知れませんが、現場(高校も大学も)の負担は軽減されます。

 

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神戸 悟(教育ジャーナリスト)

教育ジャーナリスト/大学入試ライター・リサーチャー
1985年、河合塾入職後、20年以上にわたり、大学入試情報の収集・発信業務に従事、月刊誌「Guideline」の編集も担当。
2007年に河合塾を退職後、都内大学で合否判定や入試制度設計などの入試業務に従事し、学生募集広報業務も担当。
2015年に大学を退職後、朝日新聞出版「大学ランキング」、河合塾「Guideline」などでライター、エディターを務め、日本経済新聞、毎日新聞系の媒体などにも寄稿。その後、国立研究開発法人を経て、2016年より大学の様々な課題を支援するコンサルティングを行っている。KEIアドバンス(河合塾グループ)で入試データを活用したシミュレーションや市場動向調査等を行うほか、将来構想・中期計画策定、新学部設置、入試制度設計の支援なども行なっている。
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