中学校・高等学校の管理職や進路指導・キャリア教育・探究を担当する教員を主な対象としたイベント「Girls Meet STEM for School」(山田進太郎D&I財団)の成果報告会が、2月20日(金)、富士見丘中学高等学校(東京都渋谷区)で開催された。

 

「Girls Meet STEM」プログラムの効果と独自の分析

 「Girls Meet STEM」は、全国の女子中高生を対象に、企業・大学・高専と連携してSTEM領域の現場体験や女性ロールモデルとの出会いを提供するツアー型プログラムである。2025年5月からは、学校単位で参加できる「Girls Meet STEM for School」を開始し、すでに14校で実施されている。今回の会場となった富士見丘中学高等学校もその参加校のひとつだ。

 「Girls Meet STEM for School」は、企業・大学訪問と出張授業の2形態で実施されている。なお、「Girls Meet STEM」全体の参加者1,398名へのアンケート(2025年8月末時点)では、特に学年が低い層や文理中間層で理系志向が伸びやすい傾向が見られた。

 ただし、参加から大学進学までには数年の時間差があるため、直接的な効果測定は容易ではない。そこで財団では、参加前後の理系進路意向の変化をもとに、STEM学部への進学確率への影響を推定している。その結果は+2.59pt。10,000人が参加すれば、理系(STEM)進学者が259人増える計算になる。

プログラムに参加した富士見丘中学高等学校

 富士見丘中学高等学校は、2015年度にスーパーグローバルハイスクール※1、2020年度にワールド・ワイド・ラーニング※2に指定され、慶應義塾大学など国内外の大学、スーパーサイエンスハイスクール※3として指定された鹿児島県の池田中学・高等学校や、公益財団法人 地球環境戦略研究機関をはじめとした専門研究の機関、あるいは企業と連携した教育を展開してきた。2024年度には高等学校DX加速化推進事業※4にも採択され、3DプリンターなどのIT機器導入やプログラミング教材の活用も進むなど、探究的・文理横断的な学びを推進している。

 同校の「Girls Meet STEM for School」は、出張授業と企業訪問の両方を実施した。出張授業「STEMロールモデル講演会」は中1〜高1が参加し、企業訪問は中2全員が対象。単なる見学で終わらせないため、事前・事後学習をロングホームルームで丁寧に行っている。

年間の進行(中学2年生)
• 5月:事前学習開始
訪問先として決定していた日本IBMの企業研究からスタート

• 6月:事前学習の深化
訪問先としてオイシックス・ラ・大地、メルカリ、サイバーエージェントが追加決定し、計4社の企業研究

• 6月:訪問先の希望提出
4社の研究内容を踏まえ、訪問したい企業を選択

• 7月:質問事項の作成
決定した訪問先に向けて質問を準備

• 9月:企業訪問
会社見学、研究機器体験、マーケティング戦略のプレゼン、女性社員へのインタビューなど

• 10月:成果発表会
チームごとに成果報告に関して5分間のプレゼンを作成。全生徒が予選会で発表し、ルーブリックで評価。その中で特に優れた代表7チームによるコンクール形式で本選を実施。

 

生徒に最も響いたのは「女性社員へのインタビュー」

 複数の生徒の声を総合すると、特に印象に残ったのは女性社員へのインタビューだったという。「理系=難しい研究を黙々と続ける」というイメージを持っていた生徒が多かったが、実際には海外の顧客に説明する場面もあり、理系でも英語が必要という話に驚いたという。文理を問わず英語が重要であることを実感した生徒も多かったようだ。

学校側の負担と、それを乗り越える組織力

 プログラム自体に費用負担はないものの、事前・事後学習の設計や企業との調整など、教員側の負担は決して小さくない。しかし富士見丘の場合、WWLにおいて「カリキュラム開発拠点校」として、新たなプログラムを既存のプログラムと融合させながらより発展的な取り組みを構築する土壌が整っていたこともあって、大きなトラブルなく実施できたという。結果として、生徒・教員ともに満足度の高い取り組みとなった。

 「Girls Meet STEM for School」は、女子生徒が自分の興味関心を見つけるきっかけとして非常に有効なプログラムだと感じる。費用負担がなく、企業・大学との接点をつくりやすい点も魅力である。ぜひ全国の中学校・高等学校で活用が広がってほしいと感じた。

※1 スーパーグローバルハイスクール(SGH)
国際課題の発見・解決に取り組む学校を指定し、大学・企業と連携した高度なカリキュラムを実施。

※2 スーパーサイエンスハイスクール(SSH)
理数教育を重点化し、大学等と連携した先進的な科学教育を行う学校を指定。

※3 WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)
文理横断の高度な学びを提供する拠点校を全国に配置し、高大接続改革や探究的学びを推進。

※4 高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)
ICT活用やデジタル分野の学びを強化する学校を支援し、デジタル人材育成を加速。

大学ジャーナルオンライン編集部

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