2027年4月、青山キャンパスに初の理系学士課程「統計データサイエンス学環」を新設予定の青山学院大学。既存の5学部(教育人間科学部、経済学部、法学部、経営学部、理工学部)と連係し、それらの学部から提供される専門科目も学べる教育プログラムを展開する新学環では、どのような人材の育成を目指しているのだろうか。新学環で教鞭を執る保科架風准教授(現 経営学部 以下、保科)と、大原剛三教授(現 理工学部 以下、大原)に、話を伺った。

 

青山学院大学(左)経営学部 保科架風准教授 (右)理工学部 大原剛三教授

学びのアプローチが根本から異なる「統計を軸としたデータサイエンス」

 これまで日本国内では、統計と名の付く学部は存在せず、データサイエンスを専門に扱う学部が誕生したのもここ10年ほどのことに過ぎない。これらの既存の学部では、機械学習、数学、統計、プログラミング、データ分析などを個別に学ぶカリキュラムが一般的であった。

 これに対して、青山学院大学が新設する統計データサイエンス学環は、学びのアプローチが根本から異なる。最大の特徴は、統計学を中心とする学びを軸に、データサイエンスのスキルを磨き上げていくという点にある。「基礎から応用、そして実践へ」という流れで4年間のカリキュラムが組まれている。
4年間のカリキュラムは基礎から応用へという流れで組まれている

 

保科:「統計データサイエンス学環は、統計学に力点を置いたデータサイエンスを扱う場にできれば、と考えています。データサイエンスという学問は、国内では10数年ほど前からAIやディープラーニングなどの技術革新とともに発展してきました。そうした中で我々が重視しているのは、問題解決です。問題解決とは、次の行動を正しく決めること。今ある現状に、どうふるまえばよいかわからないことが「問題」だとすると、可能な限り正しく導くことが「問題解決」と言えます。たとえデータ分析ができても、あるいは予測精度の高いAIが作れても、自分が行動を選択するに足るデータがなければ、次の行動を決めることにはつながりません。そこで、統計学がこれまで伝統的に扱ってきたような、そもそも今どんなデータが必要で、それを正しく取得するにはどうすべきかを理解するための知識と技術が重要になってきます。

1学年60名という少人数制で「考える」能力を修得

 統計データサイエンス学環では、1学年につき60名という少人数制を採用している。データ分析による社会の課題解決ができる人材を育成するには、真の問題は何なのかを常に意識し考える必要があり、それを行動規範に落とし込むところまで伝えねばならない。単に知識を伝達するだけでなく、分析方法を学生と検討し、最適な解を導き出すためには、密接なコミュニケーションを図る必要がある。1学年 60名という規模は、そうした人材育成をするのに理想の人数だ。

 また新学環では、1年次前期から2年次後期まで基礎ゼミナール4講座を設け、「考える」とはどういう行動なのかを学ぶとともに、文章を正しく把握する読解力、考えの整理やコミュニケーションに必要な論理的思考、批判的思考などを磨く設計だ。この基礎ゼミナールを通じて、データサイエンスにおける問題解決に欠かせない「考える」能力の修得を学生に促していく。

保科:「私はこれまで、経営学部でデータサイエンスを教えてきましたが、新学環ではビジネスや科学だけでなく日常生活でのデータを分析する統計学を軸にデータサイエンスを学んでいきますので、学生の学習の継続性が大きく違ってくると思っています。加えて、各学部との連係の中で、相手の困りごとは何なのかを深掘りして問題を解決する、社会科学的な素養やコミュニケーション力も身につけることを目指しています」

大原:「実際の問題に触れながら学ぶというのは、大切ですね。私が常々学生に言っているのは、しっかりとデータを観察して欲しい、ということです。数字の羅列やグラフの形だけを見るのではなく、相手がそのデータをどう扱おうとしているのか、背景も踏まえた上でしっかりと読み解いて、そこから新しいものを見つけていく。新学環でも、データを観察できるスキルを持つだけでなく、実際に社会課題を解決に導く能力まで身につくような教育をしていければと思っています」

産学官の「共同研究の現場」を体験。将来的には他学部とのコラボレーションも

 学環の設置に伴い開設される予定の統計データサイエンス研究教育センターでは、産官学でのさまざまな共同研究の現場を実際に体験しながら、データサイエンスによる問題解決を学ぶ機会を作っていく。また将来的には、理工学部をはじめ他学部の先生や学生も、共同研究の場に加わることのできるコラボレーションの機会を作ることも構想している。たとえば法学の分野では判例の分析にデータサイエンスを活用しているし、経営学では企業の財務諸表の分析にもデータサイエンスが利用されている。現在のデータサイエンスは、あらゆる学問分野において必要不可欠な存在になっており、新学環での共同研究によって、新たなシナジー効果が生まれることも期待されている。

さまざまな問題解決の場面で「最適な判断ができる能力」を涵養(かんよう)

 統計データサイエンス学環では、データ分析ができるだけのデータサイエンティストの育成を目指しているわけではない。さまざまな問題の解決に取り組む場面で、必要なスキルはデータサイエンスを通じて身につけ、統計学の学びとして最適な判断ができる能力を涵養していきたいという。AIをはじめとする今の時代のテクノロジーは非常に速く進歩しており、10年後も今のまま通用するとは限らない。そこで必要となるのは、知識を詰め込むことではなく、より普遍的な「知性」を身につけることだ。
変化は激しい時代、普遍的な「知性」を身につけることが大切

 

保科:「いろいろな知識を修得する中で、ものごとの背景や本質を見極め、それらを自分の中に落とし込んで、さまざまな場面で活用していく。人間が普遍的に武器にすることのできる知性というものを、学生たちに身につけてほしい、これからも意識して学生に教えていければと考えています」

大原:「新学環でデータサイエンスのカリキュラムが体系化されることの意義は大きいですし、理工学部との共同研究などによって学生のスキルが向上することも期待できます。統計とデータサイエンスに関する横断的な学びとして社会的にも注目されると思いますし、学生には、ぜひ社会や企業とのつながりの中で経験を積んでもらいたいですね。たとえば、理工学部でディープラーニングを研究している学生には、そのスキルを磨いてもらう一方で、課題によって最適な手段を自分で選べる柔軟性も身につけてもらえればと思っています」

「統計データサイエンス学環」が求める学生の志向とは

 統計データサイエンス学環では、どのような志向を持つ学生に学びに来てほしいと期待しているのだろうか。

大原:「データをはじめとするさまざまなテーマに対して、パズルを解くようにワクワクしながら取り組める人に来てもらえるとうれしいですね。数学的素養は必須ですが、興味を持って取り組める好奇心のようなものがあるのとないのとでは、そこから先の伸びが全然違います。データなどの背後に隠れているものを解き明かす感性を持つ人に来てもらえることを期待しています」

保科:「コアになるのは統計学ですが、その上で主体性も必要ではないかと思います。データサイエンスの世界では、自分から取り組むこと、楽しむこと、熱中していくこと、そして何より、目の前にいる人の困りごとに自ら関わっていくことが大切になると感じています。そういう意味では、本学が人材育成の目標に掲げているサーバント・リーダー(自由で自立した存在として、他者に仕えるとともに互いの価値を見出し、それを他の価値とつなぐことによって新しい時代を創造する人)は、データサイエンスという学問と通じるものがあるのではないでしょうか。利己的ではなく利他的であり、目の前で困っている人を助けることに喜びを感じられる人には合っていると思いますし、そういう存在になりたいと思っている人に、ぜひ学びに来てほしいです」
統計データサイエンス学環は、青山キャンパス(東京都渋谷区)に設置される

 

「BIT VALLEY」渋谷・青山の地で学ぶ

 生成AI時代にこそ、必要となる統計を軸としたデータサイエンスの学びに取り組む青山学院大学。2027年4月に誕生する「統計データサイエンス学環」は、これまでのデータサイエンスを専門に扱う学部とは、学びのアプローチが根本から異なる。1学年60名という少人数制で、データサイエンティストだけを養成するのではなく、さまざまな問題解決の場面で「最適な判断ができる能力」を涵養する教育を行う。どれもが特長的であり魅力的だ。IT関連企業やスタートアップが多く集まる「BIT VALLEY」渋谷・青山の地で、企業との連携を視野に入れた教育に、これからも目がはなせない。

青山学院大学 理工学部

大原 剛三 教授

青山学院大学 経営学部

保科 架風 准教授

 

青山学院大学

すべての人と社会のために未来を拓くサーバント・リーダーを育成

青山学院は、キリスト教信仰に基づく教育と、リベラルアーツ教育を柱に、すべての人と社会に貢献する人材、「サーバント・リーダー」の育成をめざしています。教養と技能を身につける、独自の全学共通教育システム「青山スタンダード教育」を展開。主体的に学び、自己を確立し、社[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

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