「新たな分野を学びたい」「仕事に役立つ力を身につけたい」など、心の内にある学習意欲に気づいたことはないだろうか。そんな人々が集うのが、社会人向け共学大学院の東洋英和女学院大学大学院。実際に修士課程で学ぶ社会人は、どのような日々を過ごしているのだろうか。国際協力研究科国際協力専攻国際政治経済・地域研究コース修士1年の浅井伸行さんの体験談を見てみよう。

 

大学院の学びを仕事で活かすラストチャンスと考えた

 現在は宗教系NGOで働いている浅井さん。政策提言の準備や、海外団体と連携して課題解決に取り組む機会もあるという。そんな浅井さんが大学院での学びを視野に入れ始めたのは、NGOで働き始めて10年ほどが過ぎた頃だった。

「今の職場では15~16年働いていますが、10年経った頃から国際協力に関する最新の動向を知りたいと思うようになりました。また、自分たちの活動を客観視し、位置づけや課題を整理する必要性も感じて。大学院に入れば同じような職種や近しい分野の方にも会えると思い、入学を検討し始めました。
また、政策提言活動にはエビデンスが求められます。そのための学問的な手法を身につければさらに仕事のクオリティーを上げられると思い、大学院に興味を抱きました」
国連気候変動枠組条約締約国会議にNGOとして参加

 大学院入学を思い描いたものの、行動に移すまでには数年かかった。子育てなど、私生活も大切にしたいと思っていたからだ。

「数年前は子どもがまだ小学校低学年だったので、家で宿題を見たり遊び相手をしたりする時間を優先していました。子どもがある程度成長し、時間に余裕ができてきたので1年ほど前に改めて大学院を調べたんです。これ以上タイミングが遅くなると、学んだことを仕事でなかなか活かせなくなってしまいます。社会人として学ぶラストタイミングだと思い、入学を決意しました。妻も賛同してくれました。」

 東洋英和女学院大学大学院を選んだ決め手は、仕事内容とも親和性が高い国際協力研究科の存在と、国の専門実践教育訓練給付金をもらい授業料を抑えられること。そして既知の教員がいたからだった。

「滝澤三郎客員教授は存じ上げていたので、大学院に関する相談に乗っていただきました。修士論文で書いてみたいテーマを伝えてみると、先生は『従来扱われていないテーマなのでぜひ挑戦してほしい』とおっしゃってくださったんです」

多様なバックグラウンドに触れられる。大学院の授業の魅力

 入学してみると、予想以上に多様なバックグラウンドを持つ社会人が集っていた。教室には、外務省やJICA、開発コンサル企業、教育現場など、さまざまな場所で働く人々が。これから国際協力に携わりたいと思っている人や、青年海外協力隊経験者などもいた。

「最初のうちは先生による講義が中心でしたが、少しずつ学生の発表機会が増えてきました。みなさんがそれぞれのバックグラウンドを活かした発表をされるので、気づきが多いです」

 「国際法特論」の授業では、浅井さんも発表を経験した。教科書の内容を1章分担当し、その内容を批判的に分析して論点を述べていく。自身の経験を客観的に捉え直し、意見を追加する場面もあったそうだ。

「国際法は従来、政府間の条約や合意事項だと思われていました。しかしこれからは国家以外のアクターも関わっていくような仕組みが必要なのではないかと、今学期の教科書では指摘しています。私や同僚もNGOとしてそういった場面を経験してきたので、これまでの活動が国際法の形成や維持発展に貢献していた部分もあるだろう、と発表しました」

 発表を通して多様な視点に触れられることに、浅井さんは楽しさを感じている。

「単にエピソードを紹介するのではなく、授業のテーマと結びつけながら経験や課題をお話ししていただけます。授業の人数は10人程度のことが多く限定的なので、先生方もひとりひとりのバックグラウンドを把握していて。適切なタイミングで話を振ってくださいます」

 所属している国際政治経済・地域研究コースはもちろん、他のコースや研究科の授業を履修できる点も魅力的だという。とくに関心を持っているのが、人間科学研究科で開講している死生学の授業だ。

「本学が死生学を扱っているのはもともと知っていて、宗教とも関係が深いので興味がありました。単位の取得が可能だと入学後にわかったので、今後履修してみたいです。国際協力研究科の授業にも人間科学研究科の教育学関連分野から参加している方がいて、お互いの視野が広がりました」

 仕事と両立しながら通ううえで助けになっているのが、オンラインでも授業に参加できる点だ。東洋英和女学院大学大学院は全講義科目でハイブリッド授業を実施している。学生は対面とオンラインどちらでも受講可能。住んでいる場所や仕事の都合に応じて参加方法を選んでいる。

「私は極力対面で授業に出ていますが、どうしても仕事の都合で来られないときはオンラインで参加します。なかには大阪に住んでいる方や、アフリカから参加している方もいて。オンラインでも、対面参加の学生と変わらず対等に議論に加われます」

 浅井さんは現在、指導教授の河野毅研究科長と相談しながら修士論文のテーマを考えている。まだ正式には決定していないが、仕事とも関連の深い内容を掘り下げていく予定だ。

「宗教系NGOは日本ではあまり注目されませんが、世界にはたくさんあります。独自の役割や課題などがこれまでもさまざまな形で議論されてきました。修士論文ではとくに気候変動問題に対する宗教系NGOの取り組みや課題を研究しようと、現時点では考えています」

 論文執筆の方法や文献の調べ方などを学ぶ「社会科学研究手法」も、浅井さんが気に入っている授業のひとつだ。

「あまり触れたことのない世界だったので、とても大事な内容だと感じました。これから政策提言活動をするうえでも助けになると思います。どういった視点が必要か、もっと調べなければならないことは何かなどが考えやすくなりますから。また、質問できる相手も増えました。そうした人脈の広がりも、今後間違いなく役に立つと思います」

問題意識を持って学べる。社会人が大学院に通う意義

 「学部時代を思い出して後悔することがたくさんある」と振り返る浅井さん。社会人になってから大学院に通い始め、学びへの向き合い方が変わったと感じていた。

「学部生時代はおもしろそうな授業や単位の取りやすそうな授業を選んでいたように思います。自分の姿勢や理解が足りていなくて、もったいなかったですね。今は問題意識を持って授業に臨めますし、仕事で得た経験や知識もあります。社会や学問を俯瞰したうえで、今学んでいる内容の位置づけが多少はわかるようになりました」

 今後は大学院での学びを活かして業務の質を上げていきたいと、浅井さんは考えている。連携している海外団体との議論にも、より専門的な視点を持って参加できるのではないかと、期待を寄せた。

「仕事で協力する海外の諸団体には博士号を持っている方もいますが、私の職場にはそうした人材がいなくて。これまで理解が追いつかなかった専門的な議論にさらに参加し、活動の質を上げられればと思っています。また、今の世界では対立や分断が深刻化しており、国家のリーダーや政治指導者だけに任せていてもあまりいい方向に進まないかもしれません。市民社会や、善意の人々がもっと連携して対応しなければいけないことも増えるでしょう。そうした場面に少しでも貢献したいです」

 最後に浅井さんは、大学院に興味を持っている社会人に向けて、メッセージを送った。

「世界の問題に対して『このままでいいのか』と思っている人には、非常に刺激になる環境があります。大学院は堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、先生方はとても気さくです。普段の授業も、まるでカフェで討論をしているかのようで。そのなかで良質な意見が出てきます。大学院進学を、少し気軽に考えてみてはいかがでしょうか」

東洋英和女学院大学大学院 国際協力研究科 国際協力専攻
国際政治経済・地域研究コース 修士1年

浅井伸行さん

宗教系NGO団体に勤務。持続可能な開発や人道問題など、国際的な課題を解決するための活動に携わっている。2026年4月、東洋英和女学院大学大学院国際協力研究科国際協力専攻国際政治経済・地域研究コースに入学した。

 

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