株式会社東レリサーチセンターと芝浦工業大学の田邉 匡生教授の研究グループは、AFM-IRという分析技術を用いて、半導体配線に用いられるCu(銅)配線とLow-k絶縁膜の界面近傍で生じるナノメートルスケール(1ナノメートルは10億分の1メートル)の化学構造変化を直接観察することに成功した。
これまで、実際の半導体配線構造において、従来の赤外分光法では測定領域が広く、周辺領域の信号と平均化されるため、Cu配線近傍のごく限られた領域で生じる化学構造変化を直接評価することは困難だった。そこで研究グループは、赤外分光法(IR)と原子間力顕微鏡(AFM)を組み合わせた原子間力顕微鏡赤外分光法(AFM-IR)に着目。AFM-IRはナノメートルオーダーで化学分析が可能な分析技術だ。
研究グループは、半導体配線構造を模擬したCu/Low-k絶縁膜(配線同士の電気的干渉の発生を抑える絶縁材料)試料を対象に、AFM-IRを用いて、Cu配線近傍の化学構造を調べた。
Cu/Low-k絶縁膜配線構造の表面に対してAFM-IR測定を行った結果、Low-k絶縁膜中央部と比較して、Cu配線近傍ではLow-k絶縁膜の性能維持に重要なSi-CH₃(メチル基)およびSi-H結合が減少していた。また、水酸基(OH)に由来する成分が増加していた。さらに、このような化学構造変化は界面から数十ナノメートル程度の極めて狭い領域に集中していた。
これにより、半導体製造工程で生じる界面ダメージや材料劣化について、その発生位置や化学変化をナノスケールで詳細に解析できるようになる。半導体材料開発や製造プロセス改善、および高性能・高信頼性半導体の開発への貢献が期待されるとしている。
