海洋研究開発機構海洋生命理工学研究開発センターの布浦拓郎主任研究員らの研究グループは、南部沖縄トラフの熱水活動域由来の細菌がアミノ酸など生命に必須の化合物の生合成に不可欠なTCA回路(クエン酸回路)の中でも、最も始原的な形態の回路を持つことを初めて発見した。

 地球上における生命の誕生時の形態が、自ら炭素固定を行う独立栄養生物だったのか、有機物を利用する従属栄養生物だったのか長い議論が続いている。多くの生物にとって、TCA回路は生存に必須の代謝機構であるが、TCA回路にはいくつかの形態が存在し、生命誕生前後の始原的なTCA回路の姿については様々な議論があった。

 今回、同研究グループは、好熱性水素酸化硫黄還元細菌Themosulfidibacter takaiiが最も始原的な形態のTCA回路を持つことを示した。DNA、RNA、タンパク質、代謝物を包括的に見る多元的オミクス解析の結果、この細菌が異なる増殖条件において、全く同じ酵素群を用いているにも関わらず、供給される中間代謝物の濃度に対応して柔軟にTCA回路の反応の向きを切り替えていることを明らかにした。このTCA回路の柔軟な性質は、化学エネルギーが十分に供給される熱水環境で誕生した生物が、その場に存在する炭酸と有機物種とその量に応じて、独立栄養と混合栄養の生活様式を柔軟に変更していたことを示唆している。すなわち、生命は従属栄養や独立栄養に特化した生物ではなく、所与の環境条件に柔軟に適応する存在として誕生したと考えられる。

論文情報:【Science】A primordial and reversible TCA cycle in a facultatively chemolithoautotrophic thermophile

京都大学

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