理化学研究所、関西医科大学、東京大学などの共同研究グループは、ヒトiPS細胞から作製した人工心筋組織を、独自の加圧トレーニングにより鍛えて成熟させることに成功した。
iPS細胞由来の三次元人工心筋組織(ECT:Engineered Cardiac Tissue)は、胎児の心筋に近い未熟な状態であり、実用化に向けては、「成人の心臓のように十分に成熟させること」が世界的な課題となっている。
研究グループは、実際の心臓が拍動に伴って常に周囲からの圧力変化にさらされていることに着目した。この圧力が心筋を成熟させるのではないかと考え、ECTに対する加圧トレーニング方法を検討した。
その結果、心臓が生体内で経験する環境を模倣して設定した「高圧・短時間・間欠的」な圧力刺激が最も効果的であることを見いだした。50kPaの圧力を1日1時間、合計3日間加える加圧トレーニングを実施したECTでは、心筋組織特有の規則的な構造が形成され、ミトコンドリア量の増加などエネルギー産生能が向上した。また、心拍数の上昇に応じて収縮力が高まる成人心筋の重要な機能「陽性力頻度関係」の獲得も確認された。
さらに、加圧トレーニングによって成熟したECTを心筋梗塞モデルラットに移植し、4週間後に治療効果を評価したところ、心機能の改善、ヒト由来の心筋組織の生着・再生が認められた。
以上の結果から、「iPS細胞由来の心筋組織を圧力刺激で鍛える」という新しいアプローチにより、わずか3時間のトレーニングで効率よく心筋組織を成人の心臓に近い状態へ成熟させられることが示された。本研究成果は、移植用心筋組織の機能向上だけでなく、ヒト心臓をより忠実に再現した創薬・病態解析プラットフォームや心疾患モデルの開発にもつながることが期待される。

