北海道大学の研究グループは、ヒグマによるデントコーン(飼料用トウモロコシ)の利用に、ミズナラ(ドングリの一種)とデントコーン双方の利用可能性が統計的に有意な影響を与えることを明らかにした。
近年、ヒグマによる農作物被害や人的被害のリスクは大きな社会問題となっている。農作物被害の発生要因には、ヒグマにとっての自然の食物の利用可能性だけでなく、農作物そのものの利用可能性も関与している可能性がある。しかし、多くの先行研究では、そのいずれか一方のみに着目されてきた。例えば、ミズナラが不作だとヒグマによるデントコーンの利用が増加することが知られている一方、デントコーン自体の利用可能性が与える影響は不明だった。
そこで本研究では、ミズナラとデントコーンの利用可能性が、ヒグマによるデントコーンの利用にどのような影響を与えるのかを解析した。調査は、北海道大学の学生サークル「北大ヒグマ研究グループ(北大クマ研)」の学生主導で行われた。2016~2021年の6年間、秋期(9~11月)に北海道大学天塩研究林のモニタリングルートを踏査し、ヒグマの糞を収集して食性を解析するとともに、ミズナラ・サルナシ・ヤマブドウ・ナナカマドなど自然の食資源の利用可能性を調べた。デントコーンの利用可能性は、周辺でデントコーンを栽培する企業の刈り取り状況を指標とした。
解析の結果、ヒグマによるデントコーン利用は、ミズナラとデントコーン双方の利用可能性に左右されることが判明した。デントコーンの刈り取りが進み、利用可能性が低下するにつれて、ヒグマによる利用も減少していくが、その変化の急激さがミズナラの利用可能性によって異なっていた。ミズナラの豊作年にはデントコーンの利用が急激に減少した一方、不作年には刈り取り後も長く続いた。これは、刈り取りの残滓を利用している可能性があるという。
本研究により、ヒグマによる農作物被害を防ぐためには、自然資源だけでなく、農作物自体の利用可能性を管理することも重要であることが示唆された。例えば、電気柵の設置や農作物の残滓を除去するといった「未然防除」が、ヒグマと人との軋轢の軽減につながるとしている。
