東北大学大学院の王 昱晨(ワン ユチェン)日本学術振興会特別研究員(DC2)らの研究グループは、タイ王国ウィタヤシリメティー科学技術大学院大学との国際共同研究により、ナナフシのわずか数歩分の歩行データから、歩行を生み出す報酬構造と脚の協調則をAIが抽出する枠組みを構築した。
瓦礫が積み重なった災害現場や、月・火星など未知の地表面で活動できるロボットとして、車輪では越えられない段差や隙間を踏み越えられる「多脚ロボット」への期待が高まっている。そのためには、多数の脚と関節をどのタイミングでどう動かすかという「協調」の問題を解く必要があった。
そこで研究グループは、報酬関数(報酬構造;学習で「何を良しとするか」を数値化したもの)を人が設計するのではなく、すでに上手に歩いている昆虫の運動データから、「昆虫は何を良しとして歩いているのか」という報酬構造そのものを推定する逆強化学習(「何を目指して動いているのか」をデータから読み解く枠組み)を取り入れた。
研究では、ナナフシのわずか数歩分の歩行データから、歩行を生み出す報酬構造と脚の協調則を、人の設計なしにAIが抽出した。平地の歩行データのみを教師としながら、凹凸地形や脚を1本失った状況でも、生物に近い柔軟な脚の協調が現れた。
ナナフシを模したモデルで学習した制御方策を、体格も構造も異なる六脚ロボットへ直接移植したところ、協調した方向性のある歩行を速やかに獲得し、歩行学習を従来型より約3倍高速化した。今後、災害現場など未知の環境にも柔軟に対応可能な多脚ロボットの実現につながるとしている。
