京都大学情報学研究科 梅野健教授、岩田卓也修士課程学生らの研究グループは、2016年4月の熊本地震発生直前にも電離圏異常が起きていたことを発見した。

 これまで、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震や、その前震・余震といったマグニチュード7級以上の沖合地震においては、地震発生直前の電離圏電子数異常が発見されていたが、熊本地震のようなマグニチュード7級以上の内陸直下型地震の直前に、内陸直下型地震特有の電離圏異常が発生していたかどうかは、専門家によって意見が分かれていた。

 また、熊本地震の発生2日前の4月14日午前1時頃にも、宇宙天気由来のMSTID(中規模伝搬性電離圏擾乱)による電離圏異常が観測されており、熊本地震発生直前1時間前の2016年4月16日午前0時25分頃から観測される電離圏異常が、地震由来の異常か宇宙天気によるものかは識別が困難だった。

 そこで研究グループは、複数のGPS衛星観測局から地震発生前のデータのみを用いて電離圏電子数異常を捉えるデータ解析手法(相関解析法)を、内陸直下型地震である熊本地震に適応させ、さらに、宇宙天気による電離圏電子数異常と区別する評価指標を新たに導入することによって、熊本地震に由来する電離圏電子数異常を、同地震発生1時間前から発生直前にかけて、明瞭に捉えることに成功した。

 宇宙天気による電離圏異常と地震発生特有の電離圏異常を明瞭に区別し、マグニチュード7級以上の内陸直下型地震発生直前の電離圏異常を検出したのは初めて。

 今後は、今回発見された電離圏電子数異常を地圏異常と併せて同時観測することにより、地圏-大気圏-電離圏結合による大地震直前の電離圏異常発生メカニズムの解明がさらに進み、将来的にはマグニチュード7級以上の内陸直下型地震発生の1時間前、20分前といった直前の異常検知(地震の直前予測)とその警報発信によって、内陸直下型地震の被害及び犠牲者を著しく減らすことが期待できる。

 研究成果は、2017年2月24日付で米国地球物理学会の科学誌「Journal of Geophysical Research:Space Physics」に掲載。

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