東北大学大学院歯学研究科口腔分子制御学分野の黒石智誠助教と菅原俊二教授らのグループは5月1日、ニッケルアレルギーの発症に関わるニッケル結合タンパク質はケモカインの1種であるCXCL4であることを発見したと発表した。

 身の回りにある金属製品から溶出した金属イオンは、生体内に侵入すると金属アレルギーを引き起こし、接触性皮膚炎などのアレルギー症状を誘発する。様々な金属のうちニッケルは抗原性検査における陽性率の高さなどから最も重要視されている金属の一つである。しかし、金属イオン単独では免疫システムに認識されるには小さすぎるため、何らかの自己分子に結合して複合体を形成することにより免疫システムに認識される不完全抗原の1種と考えられている。しかし、どんな分子に結合するとアレルギーを発症するのかなどの詳細は明らかになっていなかった。

 これまでの研究からリポ多糖がニッケルアレルギーを増強することが明らかになっていた。そこで、研究グループはこのリポ多糖を注射したマウスの血清についてニッケルアレルギー増強活性を調べた。その結果、単独では耳の腫れを引き起こすことの無い低濃度のニッケル溶液であっても、血清と混合することにより耳の腫れを誘導することが分かった。そこで「耳の腫れを誘導する活性」を指標として血清中のタンパク質を精製したところ、ニッケル結合タンパク質を含む画分にこの活性が含まれることが判明した。この画分に特異的に含まれるタンパク質について質量分析法により解析した結果、ケモカインの1種であるCXCL4であることが判明した。

 CXCL4は60年以上前に発見されたタンパク質だが、金属アレルギーとの関連性は知られていなかった。ニッケルイオンとの結合性やニッケルアレルギー増強活性はこの研究が世界で初めて報告した。

論文情報:【Clinical & Experimental Allergy】CXCL4 is a novel nickel-binding protein and augments nickel allergy

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