東京大学と森林総合研究所のグループは、日本列島における温帯を中心とした木本性つる植物の分布パタンが、登攀様式(よじ登り方)によって異なることを明らかにした。
木本性つる植物とは、自重の支持を他に依存する樹木のことである。これまでの木本性つる植物の研究結果は、主に熱帯でのデータに基づいている。また、広域スケールでの分布や森林生態系に果たす役割について、つる植物の多様さが考慮された研究は少ない。そこで本研究では、亜熱帯から亜寒帯を含む日本列島の19地点の森林踏査を行い、つる植物の分布状況を調べるとともに、生態的特徴として登攀様式による区分を行い、分布に関わる環境要因の登攀様式間差を検討した。
本調査の結果、日本列島では亜寒帯や冷温帯のような寒冷な地域でも、一部の森林にはつる植物が豊富に生育していた。登攀様式は、Twining climber(巻付き登攀型つる植物)とRoot climber(付着根登攀型つる植物)が主要で、幹数と幹断面積合計のそれぞれ90%以上を占めた。
Twining climberは、日本列島の南方の温暖な地点などで存在量や割合が多く、これまで熱帯の研究で得られた結果と同様に、分布と気温との間に正の関係を認めた。一方、Root climberではこの関係はみられず、日本海側をはじめとする多雪地などで存在量が大きい傾向にあり、幹密度が調査地の最大積雪深と正の関係にあった。対して、Twining climberのバイオマスは最大積雪深と負の関係がみられた。このことから、登攀様式の異なるつる植物間で環境要因が分布に及ぼす影響は異なることを明らかにすることができた。
本研究により、環境勾配に沿ったつる植物群集の登攀様式の構成の変化が、つる植物群集の森林における機能的地理勾配を形作る可能性が示唆された。加えて、温帯や寒帯では、熱帯に比べてつる植物の種数が少なく、登攀様式の構成も比較的単純なことから、つる植物の分布や生態系機能を理解する上で登攀様式による区分の有効性も提案した。この成果は、全球的なつる植物の分布パタンの解明にも貢献することが期待される。