岡山大学、慶應義塾大学、国立病院機構長崎医療センター、社会福祉法人ふくじゅの森、東北文化学園大学は、特別養護老人ホームへの診療看護師(Nurse Practitioner:NP)の配置により緊急受診の減少、医療資源の適正利用、医療費増加の抑制等改善が認められることを明らかにした。

 現在、特別養護老人ホームには医師の配置義務はあるものの、常勤していない場合が多く、看護師が医療ケアの主力となっている。一方、NPは医学の知識と初期医療に関する実践を修了した看護師を一般社団法人日本NP教育大学院協議会が認定する資格で、医師、薬剤師等の他職種と連携・協働を図りながら、従来の看護師よりも一定レベルの診療を自律的に遂行できる。

 本研究では、2019年10月から2022年9月までの期間、宮城県内の特別養護老人ホームを対象に匿名化した過去の診療データを用いて後方視調査を実施し、NPの役割と配置による効果を検証した。その結果以下の効果が認められることが分かった。

1.NPの配置により、緊急受診の回数が減少した。これは、利用者(高齢者)の急な健康問題にNPが迅速に対応できる能力を持つためと考えられる。
2.NPの配置により、不必要な入院を防ぎ、医療資源の適正利用に寄与する可能性が示された。
3.NPの配置により、1日あたりの医療費の増加が抑制された。これは、利用者の加齢に伴い要介護度が重度化しても、効率的な健康マネジメント能力を持ったNPが介護職と連携し、きめ細やかな毎日の生活上のケアを行えるためと考えられる。

 このように、NPの役割と経済効果を明らかにした本研究は、今後の政策策定や高齢者施設運営において大きな影響を与えることが期待される。NPは新しい看護師の役割として、社会的な知名度が未だ低いものの、今後の医療人材配置の最適化によって医療経済面で重要な効果を生むと考えられる。

論文情報:【The Journal for Nurse Practitioners】Nurse Practitioner Placement in A Nursing Home in Japan

慶應義塾大学
岡山大学

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