山形大学ナスカ研究所とIBM研究所が共同で発表した南米ペルーのナスカの地上絵に関する論文が、米国科学アカデミーの「Cozzarelli Prize」(コッツァレリ賞)を受賞した。山形大学学術研究院の坂井正人教授が筆頭責任著者を務めている論文で、行動・社会科学部門で日本の研究者が同賞を受けるのはこれが初めて。
山形大学によると、受賞した論文は「AI-accelerated Nazca survey nearly doubles the number of known figurative geoglyphs and sheds light on their purpose (AIによってナスカ調査が加速したことで、既知の具象的な地上絵の数がほぼ倍増し、地上絵の目的が明らかになった)」。過去1世紀に動物や人間などを描いた抽象的な地上絵が430点発見されたナスカ台地の航空写真をAIが分析するとともに、6カ月間にわたる現地調査を進めて新たな地上絵303点を確認したことを報告している。
コッツァレリ賞は米国科学アカデミー紀要に2024年掲載された3,200本以上の研究論文から物理・数学科学、生物科学、工学・応用科学、生物医学科学、行動・社会科学、応用生物・農業・環境科学の6分野で優れた論文を選び、表彰している。
山形大学人文社会科学部の森岡 卓司学部長によると、ナスカ地上絵の研究は、2004年、人文学部(現人文社会科学部)所属の4人の教員による小さな共同研究として出発したという。山形大学は同年から組織的支援を開始し、2012年には大学の自己財源でペルーの現地に山形大学ナスカ研究所を建設し、20年以上全学的な重点研究プロジェクトとして支援してきた。主な研究資金は各研究者の科研費だが、科研費が採択されない時は大学運営資金で研究を支えてきた。
玉手 英利学長は所感を発表し「特に人文系の基礎研究は、すぐに目に見える形で社会に貢献するとは限りません。しかし、時間をかけて培われた知見は、やがて社会の知的財産となり、新たな発見や国際的な対話の礎となります。山形大学のナスカ地上絵の研究が国際的に高く評価されたことは、地方大学においても世界に通じる研究が可能であり、そのためには高い志をもった研究者に対する長期的な支援が不可欠であることを示しています」とコメントしている。