筑波大学の藤井直人准教授らの研究グループは、運動中にカフェインを摂取すると、生理的ストレス増大を伴わずに、長時間運動の後半にパフォーマンスが向上する可能性を見いだした。
飲食料品からのカフェインの運動前摂取はパフォーマンス向上に有効とされる。しかし、研究グループはこれまでに、暑熱下での運動前カフェイン摂取では、深部体温上昇に伴う過度な呼吸(高体温誘発性換気亢進)や、それによる脳血流低下反応などの生理的ストレス増大が生じることを明らかにしてきた。これは血中カフェイン濃度が運動前から急激に上昇することで引き起こされ、カフェインの有益な効果を打ち消している可能性がある。
そこで負の影響を生じないカフェイン摂取方法の検討に向け、研究グループは健常な若年男女12名を対象に、暑熱下(気温35℃、湿度50%)での長時間運動(自転車運動)の途中に中用量のカフェインを摂取したときの効果を調べた。その結果、運動時の血中カフェイン濃度は徐々に上昇し、運動終盤に実施した高強度運動の継続時間が延長した。また、高強度運動の直前には運動の主観的なきつさが軽減された。一方、運動時の高体温誘発性換気亢進反応や脳血流低下反応は、カフェイン摂取による増大を認めなかった。
これにより研究グループは、暑熱下長時間運動中のカフェイン摂取では、運動時の生理的ストレスを増大させずにカフェインの有益な効果が発揮され、パフォーマンスが向上すると推察している。ただし、カフェインによってパフォーマンスが向上すると結果的に仕事量が増加するため、運動終了時の深部体温や呼吸・循環系への負荷が増大するリスクに留意する必要があると指摘している。