日本で肝がんによって死亡する人は1970年代以降、急激に減少していることが、広島大学大学院医系科学研究科の秋田智之講師、田中純子理事・副学長らの研究で分かった。
研究グループは、全国規模の疫学調査、公的統計、NDB(医療データベース)、日本赤十字社の献血者データなどを用い、肝硬変や肝がんの主要な原因であるB型・C型肝炎ウイルスの感染率、新規感染、肝がんによる死者数の長期的な変化を約半世紀にわたって評価した。
それによると、初回献血者のB型肝炎ウイルス抗原陽性率は、1995~2000年の0.63%から2017~2021年には0.13%に、C型肝炎ウイルス抗体陽性率も0.49%から0.16%に低下した。新規感染率も、献血者においてB型肝炎ウイルスで約2.38人/10万人年、C型肝炎ウイルスで約0.4人/10万人年と、極めて低い水準になっている。
特にB型肝炎ウイルスについては、2000年以降に生まれた妊婦における抗原陽性者は極めてまれとなり、母子感染防止対策の効果が次世代に及んでいることが明らかになった。また抗ウイルス治療もB型・C型肝炎ウイルスともにWHOの治療目標を達成または上回る水準にある。
日本では1970年代以降、輸血用血液の安全対策やHBV母子感染防止事業、抗ウイルス治療への医療費助成など、予防・検査・治療を組み合わせた対策が続けられてきた。世界保健機関(WHO)はウイルス性肝炎を2030年までに排除する目標を打ち出しており、日本のこれまでの対策は、WHOの目標達成に近づく成果を上げている。
一方、ウイルス性肝炎による肝がん死亡の減少に伴い、肝細胞がん死亡に占める非ウイルス性の割合は1992年の6.8%から2019年には56.0%へと上昇した。これは主としてウイルス性肝炎関連の肝がん死亡が減少したことによる相対的な変化だが、研究グループは、肝炎対策を維持するとともに、非ウイルス性肝疾患にも目を向けた肝がん対策を進める必要があるとしている。
論文情報:【The Lancet Regional Health – Western Pacific】Liver cancer in Japan: epidemiological transition, viral hepatitis control, and emerging challenges
