大阪公立大学と国立環境研究所が東京都渋谷区の住宅地において都市ガスに関連するメタン排出の実態を調査したところ、単位面積あたりの年間メタン排出量は約8割が都市ガス起源と推定されることがわかった。
温室効果ガスの一つであるメタンは、20年間のスケールで評価すると、二酸化炭素(CO2)の約84倍の地球温暖化作用をもつ。しかし大気中にとどまる期間は約10年と二酸化炭素よりも短いことから、メタン排出の削減により比較的早期に温暖化を緩和する効果が期待されている。一方で、行政が作成している温室効果ガス排出量の一覧(排出インベントリ)は、主に統計と排出係数を用いて推計・集計されているため、実際の排出量や排出源については十分に把握されていない。
そこで本研究では、東京都渋谷区の住宅地において、2024年5月から2025年12月まで大気観測を行い、メタン排出の実態を調査した。都市ガスにはメタンとともにエタンが含まれるが、自然由来の微生物がつくるメタンにはエタンがほとんど含まれないことを利用して、都市ガス起源と生物起源のメタン排出を区別した。
観測エリアの単位面積あたりの年間メタン排出量は、主要なメタン排出源として知られている自然湿地と同程度であり、水田からの一般的な排出量を上回った。また、そのうち82~84%が都市ガス起源と推定された。同じ方法で測定した大阪府堺市中心部と比べ、渋谷区の観測エリアの年間メタン排出量は約1.9倍であった。
メタン排出量は冬季に増加し、秋から春には朝と夕方にピークが現れた。特に冬の夕方に排出量が大きくなるなど、住宅地での給湯や暖房に伴う都市ガス消費と整合する季節・日内変化を示した。
さらに、移動観測により、メタン濃度が局所的に高くなる場所(ホットスポット)を94カ所検出した。このうち86%が都市ガス起源、10%が生物起源に分類された。ホットスポットは住宅地や商業地に多く、都市ガス起源のものは飲食店や集合住宅の近くでも確認されたという。
本研究により、都市部におけるメタン排出の実態とその発生特性が明らかとなった。この成果は、温室効果ガス削減対策の検討や対策効果の検証につながることが期待される。
