近い将来、高確率で発生が予測されている南海トラフ地震で、三重県南部の東紀州地域で発生する災害廃棄物量が約7万トンから28万トンと推定され、その処理には少なくとも1.6年以上かかることが、早稲田大学、東北大学、米Lehigh大学の国際共同研究グループによって明らかになった。
研究グループは、地震や津波によって発生する災害廃棄物の量と処理に要する時間を、廃棄物処理施設や道路ネットワークなど複数のインフラシステムの被災状況を踏まえてリスクアプローチに基づき推定する新たな数理モデルを開発した。三重県南部の東紀州地域(尾鷲市、熊野市など2市3町)を対象にシミュレーションを行った結果、災害廃棄物量は約7万トンから28万トンと推定され、その処理には少なくとも1.6年を要することが分かった。
さらに、災害廃棄物処理に大きな影響を与えるパラメータとして、既設処理施設の安全性、仮設処理施設の設置に要する時間や処理能力、道路網の交通容量などを解析した。その結果、橋梁の耐震性が高く、震災後も車両が道路ネットワークを利用しやすいほど、災害廃棄物対策の効果が高まることが明らかになった。災害廃棄物処理のマネジメントには、廃棄物処理システムと道路ネットワークの管理主体が連携し、震災前から対策を講じる必要性が示された。
2011年の東日本大震災では約2,300万トンの災害廃棄物が発生し、その処理が復旧・復興の大きな障害となった。南海トラフ地震では全国で約4.2億トン、東日本大震災の約21倍の災害廃棄物が発生すると推計されており、迅速な処理が地域の早期復興、すなわちレジリエンス強化に不可欠であると考えられている。