学校法人加計学園 理事長 加計役さんのインタビュー第2弾。
第1弾はコチラ

 

学校法人加計学園 理事長 加計役さん

2040年に向けて、地域や社会に必要とされる私立大学へ
加計学園の現在地と私立大学の将来展望

「ひとりひとりの若人が持つ能力を最大限に引き出す」を建学の理念にスタートした加計学園は、現在、収容定員8,000名を超える岡山理科大学と、倉敷芸術科学大学の2大学、他に岡山理科大学附属中学校・高等学校など、7つの設置校を有しています※1。また学園発祥の地である広島県にはグループ校、岡山県内には別法人の高等学校※2と、全体では、園児・児童から大学生まで約22000名が通う総合学園です。
学校法人加計学園岡山理科大学正門

現在、学園全体で進めているのが少子化の進行に合わせた学園ポートフォリオの見直しと再編で、エリアや学校種毎に、それぞれの接続や連係などを視野に、強みとする分野への選択と集約、その強化などを図っています。

おりしも2026年4月、財務省から「2040年までに私立大学の約4割を減らす必要がある」との提言が公表されました。すでに私大間では「2035年の崖」などの表現で、少子化の急速な進展で私学経営は極めて厳しい時代を迎えるとの危機感が共有されていましたが、それを財政当局が裏付けたことで、私大関係者、教職員の危機感は一層強まりました。

しかし少し冷静になって考えれば、私たちはこれを、「自分たちは何のために存在しているのか」について考えるよいきっかけと捉えることもできるのではないか。そして悲観するよりも、教職員一丸となって、どうすれば残りの6割に入れるかを考え、そのための努力は惜しまないと決断することの方が先だということに気づくはずです。

私学教育の目的や使命が、子どもたちが将来、幸せな人生を歩むための力を身につけてもらうこと、そのためにその将来像から逆算し、今の時代に必要な知識や経験を提供することだとすれば、各校は社会実装も含めて地域にどれだけ貢献し存在感を示せるか。それを、今後ますます問われることになるのではないでしょうか。

※1 岡山理科大学専門学校、玉野総合医療専門学校、兵庫県神戸市東灘区の御影インターナショナルこども園
※2 福山市の英数学館小学校・中学校・高等学校、広島市の並木学院高等学校などと、岡山県には吉備高原学園高等学校がある。

陸上養殖から宇宙養殖へ、世界に発信できる研究を

さいわい本学には、多様な学部・学科があり、中には全国から注目を集める研究や研究組織もあります。
岡山理科大学 恐竜学博物館

たとえば2025年に新設した恐竜学科。ゴビ砂漠での長年の発掘の成果を継承する国内唯一の拠点で、直近では恐竜の化石からタンパク質を抽出し、そのアミノ酸の塩基配列を分析するなどの世界的な成果も生まれています。一方で学外に積極的に出向き、小・中学生の理科、科学への興味関心を惹き出すのと、地域振興に役立ててもらうための社会貢献活動にも力を入れています。

またすでに述べましたが、近年、マスコミでも話題になっているのが好適環境水センターによる陸上養殖。淡水に、魚の生存に最低限必要なナトリウム、カリウム、カルシウムなどの成分を添加した「好適環境水」と呼ぶ人工の飼育水を使ったもので、海水魚と淡水魚を一つの水槽で同時に育成できます※1。これまでにフグをはじめクエなどの貴重な魚をこの水を使って陸上で養殖し、「おかやま理大うなぎ」「理大フグ」「理大クエ」などの名称で発表、発売もしています。
「おかやま理大うなぎ」の名称で発売:好適環境水による陸上養殖

さらに近年は、将来、人類が月や火星で生活する際の食料自給を視野に、JAXAと連携して「宇宙養殖」の研究も進めています。すでに打ち上げ時の重力や宇宙空間の特殊な環境や無重力状態でも生育し、産卵できる魚介類がいることは確認できていますから、理学部基礎理学科の、アルテミス計画に関わり、月面の水資源を探査する研究者※2との連携で、将来、「月面で、月の水で地球の魚を養殖する」ことも夢ではないかもしれません。

理工系の大学ですが、創立者が中学・高校の教員だったこともあり、教育学部にも力を入れています。例年200人を超える教員を、西日本中心に輩出していて、近年は、国際バカロレア(IB)教員の育成にも力を入れ、全国有数の拠点作りを目指しています。

※1 山本俊政准教授らが長年にわたって取り組んできた画期的な技術。マスコミの他、2026年度の大学入学共通テスト『英語』のリスニング問題に取り上げられたことでも話題を呼んでいる。
※2 新原隆史准教授

他にも高周波音を使った野生鳥獣被害抑止装置の効果実証に協力する研究もあります。直近では空港にとどまらず、富山県の南砺市でクマ対策の取り組みを始めるなど、社会実装を積極的に進めています。

また獣医学部では情報理工学部との連携で『ペットの毛が絡みづらい今治タオルの開発』 や、災害時、ペットとの同伴避難を想定した人もペットも一緒に食べられるフードの開発なども行っています。

これが実際に役立ったのが、2025年3月の大規模な山火事(令和7年今治林野火災)発生時。すでに獣医学部では、開設された2018年に愛媛県今治市、愛媛県獣医師会との三者で、災害時の動物救護活動・被災者救助活動に関する連携協定を締結。今治キャンパスが災害時のペット同行避難拠点として活用されることになっていました。大学施設そのものがペット同行避難の受け入れ場所となったのは初めてで、協定締結に合わせて「災害時同行避難体制の確立」が授業の準正課に組み入れられるようにもなりました。

この時の山火事の現場はキャンパスから10kmほど離れた地区でしたが、避難場所の体育館にはSNSなどで知った3世帯7人と11匹のネコが同行避難、その際、開発したフードが大活躍しました。
ペットの毛が絡みづらい今治タオル「pet towel」

日本基準の偏差値から、グローバルスタンダードの世界ランキングへの挑戦

少子化の進行には負の側面だけではなく、教育の目標を実質化させるプラスの側面もあります。入試での競争原理が成り立ちにくくなってきた今は、進路選択の基準を入口の偏差値ではなく、入学後に学生をどれだけ伸ばしたかなど、教育の質で評価するという本来の姿に戻すには絶好の機会だと考えています。

そもそも多くの私学の原点は、学ぶ楽しみを求め同志が集まってできた私塾です。学びは本来、楽しいものでなければならないとの思いは、本学においても一貫しています。ひたすら知識を教え込むのではなく、本人の「好き」を出発点に、自ら学ぶ意欲を高めて得意技を磨き、それを自分の強みへと育て社会に役立てていく。このような教育方針が偏差値重視の学校、大学選びとは相いれないことは明らかです。

加計学園の設置校およびグループ校では、2016年に英数学館高等学校が、2019年には岡山理科大学附属高等学校が、国際バカロレア(IB)プログラムの認定を受け、大学への合格実績をアピールする教育から、グローバルスタンダードに準拠する教育へと舵を切りました。

大学においても、大学評価の世界基準とされる世界ランキングを意識した運営に力を入れ、国内で最も知られる「THE世界大学ランキング」の2025年度版で1501+位にランクイン(分野別では生命科学分野、物理化学分野でともに1001+位、学際的科学ランキングでは国内私学5位タイ)、2026年度版では国内で51位タイなどと健闘しています。

世界ランキングを意識した取組には波及効果もあります。本学は教職協働が進んでいる点も強みの一つですが、半面、教員のみなさんの多くは研究内容の発信には積極的ではありませんでした。その雰囲気が一変したのが、この世界大学ランキング入りと、組織としてのSDGs評価であるTHEサスティナビリティインパクトレーシングでのランクインでした。先生方の間でも、このことを家族や友人に褒められたことで、「もっと上を目指したい」という前向きな気持ちが生まれたようで、大学の知名度向上に加えて、組織内部の意識を変える大きな契機になったのです。

さらなる展開のために、2028年度以降の挑戦

2028年春には、半導体を実践的に学べる学科と、理系を基盤にしたリベラルアーツ分野をカバーする学部の定員増を伴わない新設を構想しています。前者に関しては、2025年に台湾の明新科技大学※と結んだ、半導体分野を中心とした教育を目指し、双方で学ぶダブルディグリー・プログラムを実施するという覚書を元に、高度な半導体技術者の育成を図ります。また附属高校では高校段階から中国語と半導体を学ぶ一貫教育も検討しています。

後者は、今後すべての学問の基盤になると予想されるAIを使いこなし、その上で人間に何ができるのかを深く考えることのできる人材育成、AIを使いこなす側になるためのリベラルアーツ教育に挑戦します。
※1966年、明新工業専科学校として創立。台湾のシリコンバレーと言われる新竹県にあり、2021年には世界初の半導体学部を設置。岡山理科大学は40年前に教育交流協定を結んでいる。

また教育学部のアップデートも予定しています。地方部では人口減少に伴って義務教育学校が増加していますから、それを踏まえて小学校、中学校の教員免許を同時に取得できるようにするためです。

変化しないことを恐れる

大学などの組織運営では、外部の優秀な人材を積極的に受け入れており、これまでの学園の常識とは異なる考え方や発想を取り入れ、常にその活性化をはかる必要があると考えています。日頃私が、教職員のみなさんにお話ししているのは、「変化を恐れず、変化しないことを恐れよう」です。前年と同じことを繰り返すのではなく、毎年一つでも新しい挑戦を重ねる文化をつくりたい。改善で満足せず、改革することを恐れず前へ進み続ける。その姿勢こそが、2040年を超えても、地域と社会から必要とされる私立大学であり続けるための条件だと考えています。

学校法人加計学園 理事長

加計役さん

1994年英数学館高等学校卒業、1999年東洋大学経営学部卒業、2006年米国フィンドリー大学経営学修士(MBA)。
2004年学校法人英数学館理事長(~2009年)、2008年学校法人吉備高原学園学園長(現在に至る)、2009年学校法人広島加計学園理事長(現在に至る)、2011年6月から加計学園副理事長を経て2024年から現職。

 

岡山理科大学

岡山理科大学は岡山市と今治市にキャンパスを持ち、西日本で唯一の私学獣医学部、国内初の恐竜学科など8学部20学科1コースと通信教育部を擁する中四国最大規模の私学です。また、THE世界大学ランキングで中四国の私学で唯一ランクインするなど、研究力には定評があります。[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

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