玉川大学が全学的に展開する独自の英語教育プログラム「ELF(English as a Lingua Franca:共通語としての英語)」。ネイティブスピーカーの英語を絶対的な目標とするのではなく、多様な文化的背景を持つ人々と円滑にコミュニケーションする実践的な英語力の育成を目指す。ELFセンター長 ディモスキ・ブラゴヤ教授に、ELFとは何か、その独自の教育手法や学生たちに託す想いを聞いた。

 

多様な言語背景を持つ人とコミュニケーションする英語力を養う

 ELFは「国際的なコミュニケーションの言語(リンガフランカ)として用いる英語」と定義されている。現在、世界で英語を使う人の約85%以上が、英語を母語としない「非母語話者」であることを踏まえ、英語を特定の国の人々のものと捉えるのではなく、母語が異なる人々をつなぐ「共通語(Lingua Franca)」として学ぼうとする考え方だ。

 ディモスキ教授は、ネイティブスピーカーをモデルとした従来の英語教育とELFを分けるのは「予測不可能性」だと語る。「相手がネイティブスピーカーであれば、文法や語彙、文化的な背景がある程度は予測可能です。しかし現実の国際舞台では、相手のアクセントも習熟度も多種多様であり、教科書通りの正解が通用するとは限りません」

 ELFでは、こうした予測不可能性を前提としたうえでコミュニケーションを図ることを目指す。

「重要なのは、完璧な文法や標準的な発音に従うことではありません。リアルタイムのやり取りの中で、互いに歩み寄り、柔軟に対応して目的を達成する『効果的なコミュニケーション』なのです」

 そのためには、ミスを恐れて沈黙するのではなく、相手に合わせて言葉を選び、真意を確認し合いながら協力し、意味を構築していく必要がある。こうした「相互理解への姿勢」を反映した学習法は、まさに現在のグローバル社会に求められるものと言えるだろう。

ELFを体現する教員陣と対話を引き出す環境

 玉川大学のELFセンターには、こうしたコンセプトを実現するためのユニークな仕組みが詰まっている。その一つが教室の設計だ。教員と学生一人ひとりの距離を近づけるため、教室が教卓に対して横長となるよう配置。自由に動かせる可動式の椅子やテーブルを採用し、学生同士が常に顔を合わせ、グループワークやペアワークが活発に行える設計になっている。「従来の教室によくある、他の生徒の背中を見て座るような配置は、『協働』にとって理想的な環境ではない」との考えからだ。

 授業内容においても、単なる知識の習得にとどまらず、実践的なコミュニケーション・ストラテジー(戦略)の訓練に重きを置いている。例えば、相手の言葉がわからないときには、会話を止めることを恐れずに「分からなかった」と伝えて聞き返す、別の言葉で言い換える、意味を確認するなど、対話を継続させるためのスキルを繰り返し練習する。

 指導する教員陣もまた、ELFの理念を体現する存在だ。ELFセンターには、特定の国に偏ることなく、世界中から多様な文化的背景を持つ教員が集まっている。学生はこうした教員陣と触れ合い、自然とさまざまなアクセントや考え方に接することで、「英語は一つではない」という多様性を肌で感じることができるのだ。

 また、ELFセンターの教員は、自らのことを「ティーチャー・リサーチャー(教育研究者)」だと捉え、最新のELF研究に基づいた教材開発や指導法の改善に取り組んでいる。自身の実践した手法を共有するフォーラムをはじめとする、教員同士のコミュニティもまた、質の高い教育の原動力と言えるだろう。

英語を「自分のもの」にし世界へ踏み出す自信を育む

 「日本の学生の多くは、中学・高校の6年間で膨大な英語の知識を蓄えています。しかし、その知識を活かして実際にコミュニケーションを取るための『自信』が不足しているのです」とディモスキ教授。ELFプログラムは、多様な英語に触れることで、完璧でなくても意思疎通をする体験を積み重ねることで、こうした心の壁を取り払うものだ。

「私の両親は、今でいう北マケドニアから、幼い私を連れてオーストラリアに移住した、まさに英語を共通語として日常的に使用する人たちでした。彼らは40年近くオーストラリアで生活し、誰とでも対話を楽しんでいます。重要なのはテストのスコアではない。まずはそのことを理解してもらえるよう、手助けしたいと考えています」

 「玉川大学のELFプログラムで学んだ学生たちは、卒業後、ビジネスやボランティア、あるいは旅先といったあらゆる場面で、物怖じせずに一歩踏み出す力を発揮しています。真の習熟とは、『正しい』英語をコピーするのではなく、英語を『自分のもの』として受け入れ、自分自身のために使いこなせるようになること。それが社会の他者を助けることにもつながるのです」

【ELFセンター長 ディモスキ・ブラゴヤ教授からのメッセージ】
自分の英語を自分の強みとして生かす学びを
“The priority is to become a global citizen and to become confident in yourself. This is your last opportunity to study English before you enter society.
Make English your own, and learn with us to use it to your advantage.”
「優先すべきは、自分自身に自信を持ち、グローバル市民になることです。大学はそのための英語を学ぶ最後のチャンスです。英語をあなた自身のものとし、自分の強みとするために、私たちとともに学びましょう」

 


玉川大学 ELFセンター長

ディモスキ・ブラゴヤ 教授

 

玉川大学

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