女子大学を象徴するイメージもある「家政学部」の改組を進めている日本女子大学。建築デザイン学部と食科学部に続き、経済学部、ファッションデザイン学部※ 、人間科学部※ 、そして理工学部※ の4学部を新設予定だ。新学部に受け継ぐ要素や未来に向けて発展させていく要素について、学長の篠原聡子教授に伺った。

 

家政学部を「株分け」し女子総合大学を前面に出す

 日本女子大学では2022年度以降、学科の名称変更や新学部の開設による学部学科の再編が進行中だ。その大学改革のポイントとなっているのが、家政学部の発展的改組だ。家政学部家政理学科を独立させ、私立女子大学唯一の理学部としたのは1992年。それから30年以上を経て、2024年度に住居学科を建築デザイン学部を、続いて2025年度に食物学科を食科学部へと改組した。

 篠原聡子学長は、この家政学部の改組を大きな鉢からの「株分け」になぞらえる。

「家政学部には化学や工学、情報などの分野も含まれ、従来の枠組みでは各領域の専門性を包摂できなくなってきました。そこで『学部』という鉢に株分けしてそれぞれの専門性をさらに高め、独立した学問領域として発展・進化させようと考えたのです」

「家政学部」には歴史的に女性の領域文系の学部というイメージもあり、そうした先入観や誤解を解きたいという思いもある。また、理工系学部の存在をアピールし、日本女子大学が総合大学であり、選択肢が広いことを前面に出す狙いもあるという。
 
 もっとも家政学部に属する学科の学びには、伝統的に文系・理系の両面から人間と生活を科学的に探究してきたことで培われた視点や発想がある。学部化されても、その部分は受け継いでいくと篠原学長は話す。

「家政学部では生活者視点で『本当の豊かさ』を追求します。私自身、家政学部住居学科の出身で、建築とは建物をつくることだけでなく、住み手が豊かな生活を実現するための手段だと教わりました。そうした日本女子大学らしいスタンスは、建築デザイン学部になっても変わりませんし、今の社会においてとても価値があるものだと考えています」

「日本女子大らしさ」と時代の要請に応え4つの新学部を開設

 2027年4月には家政学部家政経済学科を学部化する。現在の家政経済学科は、消費者や資本主義といったミクロ・マクロ経済を中心とする一般的な経済学部のカリキュラムとは一線を画し、消費者や労働者、家族の一員、地域の住民など生活者の視点から経済学にアプローチする点を特徴としている。

 新たな「経済学部」では生活者の視点はそのままに、経済領域、経営・起業領域、生活公共領域の3領域へ学びの対象を広げ、マーケティングや経営戦略、自らのキャリアをしなやかに切り拓いていくアントレプレナーシップ、現代社会を生き抜くために必須となるデータ分析力、自らライフキャリアをデザインする力などを身につけるカリキュラムとする。

 そして2028年4月には、家政学部被服学科を「ファッションデザイン学部※ 」に衣替えする。「デザイン」「テキスタイル」「アート」「ビジネス」の文理融合の4分野から多角的にアプローチし、ファッション関連の知識・技能と問題解決力を幅広く習得する学部にする。デザインに加えて、着心地に影響を与える要素や、高齢者や障害者の衣服に求められる機能性など、科学的・文化的視点で総合的に学ぶ。

 こうしたアプローチは、まさに「家政学」というフィールドで蓄積されたもの。「人文社会系と理工系の中間に位置する、文理融合型の学部という位置付けになります」と篠原学長は説明する。
 
 同じく2028年4月に開設予定の「人間科学部※ 」も文理融合型の学部だ。既存の人間社会学部心理学科と家政学部児童学科を統合。新たな心理学科※と人間発達学科※では、「ことば×サイエンス」「音楽×サイエンス」「身体表現×サイエンス」「視覚芸術×サイエンス」など、科学的探究と実践的アプローチで融合的に学ぶ。

 2029年4月には、従来の私立女子大学唯一の理学部を発展させる「理工学部※ 」を開設する予定だ。時代の要請に応え、社会実装へとつなぐ工学的視点を含む総合力を持つ理系女性人材を育成する。「理工学科※」の1学科4専攻で「数学・物理学専攻※」「情報理工学専攻※」「化学生命専攻※」のほか、医療・健康分野に対する社会的要請の高まりを背景に「医薬工学専攻※」で構成する構想だ。

「知性」「勇気」「協調性」を困難を乗り越える原動力に

4学部の新開設が予定どおり実施されると、日本女子大学は2029年度に9学部15学科が、都心の一つのキャンパスで学ぶ女子総合大学となる。

 学年や学部を超えた取り組みは従来、課外活動、大学の魅力を発信する学生組織「JWU PR アンバサダー」や学生相互の支援活動ピア・サポーターなど学問以外の領域にとどまっていた。今後は学問領域でも、学部・学科を横断する連携を進めていくという。2025年度末に学長企画として開催した、「学問が、交差する。」と題する7学科の卒業研究/卒業論文/卒業制作合同発表会もその一つだ。

 創立者・成瀬仁蔵が掲げた教育方針「自学自動」は、大学改革の一環で策定したタグライン「私が動く、世界がひらく。」に踏襲された。大学改革において篠原学長が目指すのは、学生が既成概念にとらわれず新しいことに挑戦できる「知性」、他人が手を上げない中でひるまず声を上げる「勇気」、多種多様な人々と手を取り合える「協調性」の3つの力を培い、「動く」を実践できる教育環境だ。あらゆる物事に対して客観的な分析に加え、自分にとってどういうことなのか、自分ならどうするかという当事者意識、オーナーシップを持つことで、新しい視点が生まれ、課題に対して前向きになれる。

「不安要素や疑問が山積みの時代、困難を乗り越えていくには知識・選択肢・仲間が必要であり、それを得るために大学があるといっても過言ではありません。日本女子大学で学ぶ皆さんには、自分ならどんな局面でも切り拓いていけるという自信を身につけていただくことを期待しています」

※構想中、名称は仮称であり、内容は変更となる場合があります。

卒業後もキャリアを支援するJWUキャリアライフセンター設置
 日本女子大学では2007年に国内初の「リカレント教育プログラム」としてリカレント教育課程を開設し、卒業生や社会人の学びを支援してきた。2026年4月には、人生100年時代に女性の生涯にわたるキャリア形成を支援するプラットフォームを目指して「JWUキャリアライフセンター」を新設。在学生にはキャリア教育とキャリア支援、卒業生には学び直しやキャリア再構築など継続的な包括支援を展開する。将来的には諸官庁や企業などと連携し、社会人向けプログラムも提供予定だ。兼ね備えた学生は多様な分野で活躍できることだろう。

 

日本女子大学

篠原聡子 学長

1981年 日本女子大学家政学部住居学科卒業
1983年 日本女子大学大学院家政学研究科住居学専攻修了
1983年~1985年 香山アトリエ
1986年 空間研究所設立
1997年~日本女子大学で教鞭を執る
2020年~日本女子大学 学長

 

日本女子大学

文理融合の多様な教育を推進、女子総合大学としての基盤を強化

創立120周年を迎えた2021年、目白キャンバスに全学部を統合。2023年に国際文化学部、2024に建築デザイン学部、2025年に食科学部を設置、2027年に経済学部を開設予定(仮称、届出中)。「信念徹底」「自発創生」「共同奉仕」を理念として、高い専門的能力を[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

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