東京大学大学院医学系研究科の正本庸介助教らの研究グループは、東京理科大学、慶應義塾大学との共同研究により、脂肪細胞から分泌されるホルモン「アディポネクチン」が感染を防ぐ白血球の増殖を高め、肥満による細菌感染の重症化を抑制することを発見した。

 肥満症はBMI(体型指数)25以上で内臓脂肪型肥満があり、肥満関連の合併症(2型糖尿病、高血圧、脳梗塞など11疾患)が1つ以上ある場合とされる。また、肥満症はインフルエンザや肺炎、喘息、がんなどの危険因子とされ、さまざまな感染症が重症化しやすいとされるが、その分子メカニズムには不明点が多かった。

 今回、肥満化させたマウスの骨髄で、脂肪細胞の異常からアディポネクチンの産生が低下していることを発見。解析により、アディポネクチンが低下すると、白血球の1種である骨髄マクロファージから炎症性サイトカインTNF(外傷などで炎症を促進する蛋白質)の分泌が増加。さらに、そのような環境に造血前駆細胞(多種の血液に分化する細胞)がおかれると、免疫システムのシグナル伝達が阻害される(サイトカインシグナル抑制因子SOCS3の発現上昇)。そのため、感染時に造血前駆細胞がサイトカインに応答して適切に増殖できなくなり、感染を防ぐ顆粒球(白血球の1種)の産生抑制により重症化することが分かった。
また、アディポネクチンを細菌(リステリア菌)に感染した肥満マウスに投与すると症状が改善することを明らかにした。

 今回の研究から、肥満症では感染を防ぐための造血機構が十分に機能しないことが判明。また、アディポネクチンの作用が不足すると造血異常が生じることが明らかになり、新治療法の開発につながることが期待される。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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