芝浦工業大学の石崎貴裕教授の研究グループは、アルミニウム合金上につくる保護皮膜について、膜の厚さと表面の凹凸の組み合わせによって、粗さの役割が「守る側」から「サビの通り道」へ変わることを世界で初めて発見した。
石崎教授が独自開発した「蒸気コーティング法」により形成される保護皮膜(ベーマイト皮膜)は、環境対応型の有力な表面処理技術として注目されてきた。しかし、皮膜の構造的特徴は製造過程で強く相関する上、装置の違いもあり、サビにくさを決める各要素の個別評価は困難だった。
そこで研究グループは、製造条件ではなく、皮膜の厚さ(膜厚)・表面粗さ・結晶子サイズ・基板の欠陥密度という4つの物理的特徴(物理記述子)から、サビにくさ(孔食電位)を予測するAIモデルを構築した。
このモデルに解析(SHAPとALE)を適用し、錯綜する各要素の影響を独立して可視化した。その結果、サビにくさを最も強く左右するのは表面粗さ、次が膜厚で、基板の欠陥密度や結晶子サイズよりも皮膜の形態的特徴が支配的と判明した。
さらに、表面粗さが大きい皮膜では、膜が薄いうち(膜厚約2200 nm未満)は粗さが被覆形成・保護的に働くが、膜が厚くなると、逆に欠陥を介した腐食因子の通り道(マイナスの効果)へと変化することを発見。この「サビを防ぐ被覆効果」から「腐食因子の侵入経路」へと役割を変える現象の発見・実証は世界で初めてという。
今回の研究では、皮膜そのものの物理的な特徴からサビにくさを予測し、その理由まで説明できる手法を確立した。製造装置や生産規模が変わっても通用する材料設計指針として、試作コストと開発期間の削減が期待されるとしている。
