東京大学の笹谷拓也特任助教らの研究グループは、部屋をワイヤレス電力伝送システムに変える技術を開発した。小型充電キャビネットやワイヤレス充電部屋、スケールアップしてケーブルなしで装置に給電するケーブルレス工場も実現できる可能性がある。

 ワイヤレス電力伝送技術は、すでに小型電気機器(スマートフォンや電動歯ブラシなど)の充電に利用可能だ。しかし、現行システムでは機器を静置し、充電マットや充電ドックから数センチメートル以内の距離に保つ必要がある。

 今回開発したシステムでは、壁に組み込まれた導電性表面の多方向分布電流を用いている。「マルチモード準静空洞共振」と呼ばれ、部屋(幅3m×奥行3m×高さ2m)全体に三次元磁界パターンを生成させ、スマートフォン、電球、扇風機などの電気デバイスに取り付けた小型のコイル型受信器と効率的に結合できる。効率を最大にするにはコイル型受信器を磁界に対して適正な角度に調整する必要があるが、部屋のどこにあっても、デバイスの稼働中でも、37.1%を超える電力伝送効率が達成できる。

 この方法は、従来の方法(コイルベースの送信器など)に勝るフレキシビリティーをもたらすという。また、安全性(特に稼働時にどれほどの電力が生体組織に吸収され得るのか)についても、連邦通信委員会(FCC)と米国電気電子学会(IEEE)が策定したガイドラインを満たしている。部屋スケールのワイヤレス電力伝送が安全に実証されたことで、産業空間、個人生活空間のいずれに使用される場合にも、今回の技術が電子デバイスへの給電に幅広く適用できるようになるとしている。

論文情報:【Nature Electronics】Room-scale magnetoquasistatic wireless power transfer using a cavity-based multimode resonator

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