近畿大学東洋医学研究所の武田卓所長・教授らの研究グループは、女性特有の症状・疾患に対して一般臨床医が優先的に学ぶべき「必須漢方8処方」を明らかにした。
月経症状や更年期障害など、女性特有の症状による経済損失は年間約2.5兆円に上ると試算されている(経済産業省「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」)。一方で、地域や勤務環境によっては女性特有疾患の専門医をすぐに受診できない場合もある。
こうした場面で、漢方治療は産婦人科以外の医師でも比較的導入しやすく、初期対応として有望と考えられている。しかし、産婦人科医以外の医師がどの漢方処方を優先的に学ぶべきかについては、これまで明確な指針がなかった。
そこで研究グループは、月経困難症、PMS(月経前症候群)、更年期症状、不安・不眠など女性診療で頻繁にみられる症状に対する漢方診療を、一般臨床医にも実践しやすい形で整理することを目的に、全国の産婦人科医を対象とした調査を実施した。女性特有の症状・疾患への対応で重要と考えられる漢方処方を最大8種類まで選択してもらい、255人の産婦人科医の回答を解析した。
その結果、34種類の漢方処方のうち、「加味逍遙散」、「桂枝茯苓丸」、「当帰芍薬散」をはじめとする8処方が、女性診療における中心的な漢方治療として高い支持を集めた。これらの処方は、女性診療でよくみられるさまざまな症状に幅広く対応できる点が特徴だという。また、選定された処方群は、医師の性別や臨床経験、漢方専門医資格の有無による大きな違いがみられず、産婦人科領域で中核となる漢方処方の共通認識が形成されていることも示された。
本研究で選定された「必須漢方8処方」は、一般臨床医が女性診療における漢方処方を学び始める際の手がかりとなる。今後は、この8処方を基にした教育資材を作成することで、一般診療や産業医領域における女性診療支援への活用が期待される。

