名古屋大学の研究グループ(※)は、新型コロナウイルスSARS-CoV-2を不活化できる卓上型のエアカーテン装置を開発した。気流制御技術に深紫外線LED照射によるウイルス不活化特性を活用した医工融合技術による成果という。

 新型コロナウイルスの蔓延抑制には、対人距離の確保が有効とされる。しかし、病院やクリニックの問診、採血、治療などの医療行為では、十分な距離の確保が困難な場合が多く、患者と医療従事者のウイルス曝露リスクの低減が緊急かつ重要な課題となっていた。

 今回、十分な対人距離の確保が難しい状況下でも、呼気に含まれるエアロゾル粒子を遮断できる空気壁(エアカーテン気流)を生成する、卓上型エアカーテン装置を開発。装置には、エアカーテン気流の強度を向上させる、切断翼を搭載した新奇の噴出ノズルを採用した(特許出願済み)。

 さらに、本装置に併装する新奇のウイルス不活化装置の開発にも成功した。この装置は、エアカーテン気流に深紫外線LED(波長280 nm)を照射してウイルスを不活化するもので、名古屋医療センターでSARS-CoV-2ウイルスを用いた実験を実施し、ウイルスを検出限界まで不活化できることを確認した。

 この装置により、エアカーテン気流で感染性飛沫を遮蔽でき、また気流そのものを常にウイルスフリーの状態に保てる。しかも、ウイルス不活化に深紫外線LED照射を用いるためフィルタが不要で、装置のメンテナンス間隔はLEDの寿命に相当する10,000時間以上と長く、長期連続稼働が可能だ。

 この装置は医療施設だけでなく、飲食店などの商業施設、事務所、会議室、受付などの事業施設、研究室や講義室などの教育研究施設などでも有用としている。

(※)他に、名古屋大学医学部附属病院、名古屋医療センター、アポロ技研株式会社、フジプリグループ株式会社、株式会社アイディーネットが参加。

論文情報:【AIP Advances】Blocking Effect of Desktop Air Curtain on Aerosols in Exhaled Breath

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