Ecology: Key to bee-ing social

 
ミツバチのコロニーの社会的ネットワークは腸内の微生物から大きな影響を受けていることを明らかにした論文が、Nature Ecology & Evolutionに掲載される。多様な腸内細菌の存在は、ミツバチの社会的相互作用の比率を上げ、感覚認知に関与する脳内代謝物の増加と関連している。

腸内の微生物、すなわちマイクロバイオームは、攻撃や同巣の仲間の認識など、個々の動物の行動の諸側面を左右し、脳へのホルモンシグナル伝達に影響を与えることが知られている。しかし、そうした作用が大集団内の社会的相互作用をどう左右するのかはあまり知られていない。

Joanito Libertiたちは今回、自動ビデオトラッキングを利用して、実験室で飼養されたミツバチ(Apis mellifera carnica)の社会的相互作用を定量化した。ハチは、実験的にマイクロバイオームを除去したコロニー、またはドナーのハチに由来する多様な天然の腸内マイクロバイオームを定着させたコロニーのいずれかで飼養されていた。多様なマイクロバイオームを持つハチの方が、コロニー内の別のハチと頭対頭の相互作用を有意に多く行うことが明らかになった。一方、マイクロバイオームを欠くハチのコロニーではそのような相互作用の偶発性が高く、社会構造がほとんど認められなかった。脳および体組織の化学分析および遺伝子解析の結果、天然の多様な腸内マイクロバイオームを持つハチの方が、マイクロバイオームを持たないハチよりも、代謝物および必須アミノ酸の量が多いことが明らかになった。その代謝物のうちいくつかは脳機能およびエネルギー論で役割を担っていることが知られており、とりわけセリンとオルニチンの2つは、ハチ同士の頭対頭の相互作用に関する重要な予測因子となっている。

著者たちは、こうした知見はミツバチの複雑な社会生活を決定付ける上で腸内マイクロバイオームが担う重要な役割を強調している、と結論付けている。

doi:10.1038/s41559-022-01840-w
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「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

 
※この記事は「Nature Japan 注目のハイライト」から転載しています。
転載元:「生態学:ハチが社会性を保つためのカギ
 

Nature Japan

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