石川県立大学の三沢典彦客員教授、竹村美保准教授、東村泰希准教授らは、日本女子大学、東京大学、及び石川県農業試験場と共同で、黄花や白花フリージアの花弁に、強力な抗酸化能を有する水溶性ポリフェノール(新規物質)が存在することを明らかにした。
フリージアは、上品な姿と優れた香りのため切り花として人気があり、石川県では県花として指定されている。フリージアは受粉の可能性を高めるため光酸化ストレスに抗して咲き続けるといい、また草食動物に食べられない工夫をしている可能性もある。そのため本研究グループは、フリージアが独自の抗酸化化合物を持つのではないかと考えた。
まず、フリージアの黄花の水溶性画分からポリフェノールを精製し、構造解析した。その結果、この無色の水溶性ポリフェノールは、強力な抗酸化能を有する新規物質であり、カフェオイルフラボノール配糖体である3’-カフェオイルケルセチン配糖体と 4’-カフェイオイルカンフェロールであることがわかった。これらは、コーヒー酸と、ケルセチンまたはカンフェロールが直接、エステル結合した骨格を有する物質で、生物界で初めて見出されたとしている。また、黄花だけでなく、フリージアの白花にも、カフェオイルフラボノール配糖体が存在することを示した。
コーヒー酸を持たないケルセチン配糖体は、既に肝障害や糖尿病など生活習慣病の予防、ダイエット(体脂肪低減効果)、及び認知機能改善効果を持つ抗酸化性機能性食品として知られている。一方、今回単離・同定された化合物のいくつかは、これらより強い抗酸化活性(脂質過酸化抑制作用及びラジカル消去作用)を示したという。
本研究から、フリージアの黄花や白花が、その控えめなイメージの下に、実は強力な安全装置を持っていることが明らかとなった。発見された化合物は、機能性食品や医薬品素材等としての開発が期待されるとしている。