東京大学大学院医学系研究科の橋本英樹教授と東京都監察医務院の林紀乃院長、浦邉朱鞠常勤監察医が東京都内で2013~2023年に熱中症で死亡した約1,450例を調べたところ、屋内発生約1,300例の16.4%がエアコンを適切に使いこなせなかったためであることが分かった。研究グループは「屋内の熱中症はエアコンがあれば防げる。家族や近隣で支え合ってほしい」と呼び掛けている。
東京大学によると、研究グループは東京都監察医務院のデータベースから2013年1月から2023年9月までの間に死因が熱中症による約1,450例を抽出、死亡場所やエアコンの有無や発見時の稼働状況、扇風機の使用状況などを調べ、分析した。
その結果、サウナや勤務中などを除く屋内での死亡約1,300例を詳しく調べたところ、男性の70.8%、女性の60.5%が独居で、60代以上の独り暮らしが死亡例の60.1%を占めていた。また、屋内死亡例の44.9%はエアコンがオフになっており、29.4%は死亡した部屋にエアコンが設置されていなかった。
6.5%はエアコンがオンだったことが確認できたが、発見時の警察の現場検証情報によれば、室温はいずれも高く、28度設定だったが暖房設定だったり、送風モード・掃除モードになっていた、また設定は冷房になっていたが温風しか出ていなかった、送風口にホコリが詰まっていて送風できていないといった事例が報告された。このうち8割は一人暮らしや高齢者世帯で、生活支援や年金の受給者、預貯金生活者がほとんどだった。
研究グループは、熱中症による死亡を防ぐためには、リモコンの電池交換やフィルター掃除、冷房・除湿モードの設定確認、家族や知人による訪問と使い方の確認、近隣での声掛けなど、地域全体での支え合いが重要であると提言している。2025年も猛暑が予想される中、こうした取り組みが命を守る鍵となる。