名古屋市立大学の香月富士日教授らは、対人関係療法を活用した「思春期拒食症母親支援プログラム」を開発した。このプログラムを受けた母親は、子どもの話を落ち着いて傾聴する能力が改善することがわかった。
思春期女性に多く発症する拒食症は、死亡率の高い深刻な精神疾患であるにもかかわらず、有効な薬物療法が存在しない。また、拒食症患者は自分の考えの意識化が不得手であること、思春期の成長に伴う役割変化に親子で適応しきれないことで、家族(特に母親)との間のコミュニケーションがしばしば複雑化し、症状悪化につながるという悪循環が存在する。
本研究では、思春期の拒食症患者の回復には母親への支援が非常に重要であるとの考えから、対人関係療法を活用した母親への新たな支援プログラムを開発した。対人関係療法は、対人関係を「役割」や「役割期待のずれ」ととらえ言語的コミュニケーションを促進するもので、役割変化への適応支援にも焦点を当てている。「思春期拒食症母親支援プログラム」も、思春期の特徴や対応方法などの情報提供を多く盛り込み、ロールプレイやグループセラピーを通じて習得を目指す。
このプログラムを4回(4週間)受けた母親は、受けていない母親に比べて、有意に傾聴能力が改善することが示された。さらに、プログラムによりサポートを受けている実感が増し、母親の孤独感が減る傾向も確認された。
母親が安心して子どもの話を聴けるようになると、子どもも自分の気持ちを話しやすくなり、症状の改善につながることが期待される。本プログラムは遠隔システムで行えるため、医療資源の少ない地域でも活用可能だ。
今後は、本プログラムの普及に向け、研修会やマニュアルを整備する予定だという。
