横浜市立大学を中心とする研究グループは、地理的制約のある地域ほど在宅医療の利用が少なく、地域間で数十倍から200倍以上の大きな格差が存在することを全国データの分析から明らかにした。医療機関までの距離や豪雪、離島といった「地理的困難性」が、高齢化社会における医療アクセスの課題として浮き彫りになった。
日本では急速な高齢化が進む中、特に医療資源の乏しい「へき地」における医療アクセスの確保が急務である。これまでの研究では、人口密度の高い都市部で在宅医療の利用が多いことが報告されていたが、在宅医療は医療者が患者宅を訪問する必要があるため、豪雪や離島などの地理的条件も影響している可能性がある。
本研究では、全国335の二次医療圏を対象に、2019~2020年のレセプト情報・特定健診等情報データを用いて在宅医療の利用実態を分析した。在宅医療のうち①訪問診療、②往診、③死亡診断、④看取りの4機能について、サービス利用を示す指標として「標準化レセプト出現比(SCR)」を算出した。また、「人口密度」「最寄りの病院までの距離」「離島」「豪雪地帯」といった地理的特性から医療における「へき地度」を評価する指標「Rurality Index for Japan(RIJ)」との相関も検討した。
その結果、SCRの最大値と最小値の比は、訪問診療で82.0倍、往診で210.3倍、死亡診断で33.2倍、看取りで29.5倍と、いずれも大きな地域格差が確認された。また、訪問診療・往診・看取りについてはRIJとの有意な負の相関がみられ、「へき地度」が高い地域ほど在宅医療の利用が少ない傾向が示された。
この結果から、人口密度だけでなく、医療機関までの距離や豪雪、離島といった複合的な地理要因が在宅医療アクセスに影響していることが示唆された。研究グループは、医療資源の配分を検討する際にはRIJのような統合的指標を活用することが重要だとしている。
今後は、個人レベルのレセプトデータを用いたより詳細な分析を進め、季節による変動や疾病負担の違いを考慮した格差評価を行う予定である。
