畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターのグループは、手のひらサイズの携帯型機器を用いてサーマルグリル錯覚を計測し、一定の妥当性・信頼性が得られることを示した。
サーマルグリル錯覚とは、温かいものと冷たいものを同時に触ることで、実際には存在しない灼熱痛に似た痛みや不快感が惹起される現象である。痛みの評価ツールとしても用いられることがある。
しかし、従来の計測装置は複数の温冷プローブを交互に並べる構造が主流であり、大型・高価であることが臨床現場での普及の妨げとなっていた。
そこで本研究グループは、2つのグラフェンで構成される軽量かつコンパクトな2プローブ型のサーマルグリル錯覚機器を作製した。これを用いて、従来型の8プローブ型装置とサーマルグリル錯覚の計測結果を比較し、携帯型機器による計測の妥当性と信頼性を検証した。
その結果、携帯型機器は従来型装置よりも痛みや不快感がやや低いものの、両装置による測定結果には中等度以上の一致が認められた。また、両装置ともサーマルグリル錯覚に特徴的な灼熱痛を主要な感覚として誘起した。
さらに、携帯型機器による単回の測定では誤差が大きいものの、複数回の計測値の平均を取ることで測定誤差が小さくなり、信頼性が向上することが示された。具体的には、痛みは4回、不快感は3回以上の計測の平均によって高い信頼性が得られることが明らかになった。
本研究により、これまで大型・高価な装置を必要としていたサーマルグリル錯覚の計測が、手のひらサイズの携帯型機器でも一定の妥当性・信頼性を持って実施可能であることが示された。特に、複数回の測定を平均することで信頼性が向上することから、今後この装置を用いた計測プロトコルを設計する上で有用な知見となるとしている。
この成果は、サーマルグリル錯覚の計測をより簡便かつ標準化された手続きとして普及させる一歩となるといえる。
