脳卒中後の患者は、歩行時にバランスを崩しやすく、転倒の危険性が高まることが知られている。特に、「歩きながら会話する」「考え事をしながら移動する」といった、別の作業を同時に行う“二重課題歩行”では、さらに不安定になりやすい。
今回、畿央大学の北郷龍也氏、蓮井成仁氏、森岡周教授、日本福祉大学の水田直道助教らの研究グループは、単一課題歩行(通常歩行)時の特徴から、二重課題歩行(歩行中に引き算を行う)時の不安定性を予測できるかを検証した。
脳卒中後の患者30名を対象に、慣性センサーと筋電図を用いて、歩行時の体幹の揺れや筋活動のパターンを測定した。単一課題歩行時と二重課題歩行時を比較したところ、単一課題歩行で「歩行速度が遅い」「体幹の揺れが大きい」「体幹動揺のリズムが不規則」といった特徴を持つ人ほど、二重課題歩行時に強い不安定性が生じることが明らかとなった。
さらに、通常歩行時の歩行速度、体幹加速度(RMS)、体幹動揺の規則性(サンプルエントロピー)といった指標の評価により、二重課題歩行時の不安定性の程度を予測できることを統計的に実証した。
本研究により、複雑な作業をしながら歩くことに不安を感じる人は、日常の歩行時点ですでに特有の不安定性の兆候が表れている可能性が示唆された。これにより、転倒リスクの早期発見や、脳卒中患者への歩行リハビリテーションの個別最適化など、より効果的な治療プログラムの開発につながると期待される。
研究グループは今後、通常歩行中の指標を活用した新たなリハビリテーションの効果検証や、認知機能負荷に対応したトレーニングプログラムの開発を進める予定だとしている。

