コロナ禍で激減した国際系学部への志願者が増加に転じている。複雑化する国際情勢に対応したグローバル人材教育について各大学の取り組みや注目すべきトピックを紹介する。
日本国内の国際化 高まるグローバル人材の必要性
日本政府観光局によれば、2026年3月の訪日外国人数は361万8900人。中国からの旅行者が減る一方で、韓国、台湾、米国、ベトナムなどの東アジア・欧米・オーストラリアといった地域からの旅行者が増え、結果、3月としては過去最高を記録した。
円安や中東地域への旅行需要の抑制などの影響もあり、日本へのインバウンドは、増加傾向が続いている。
また、令和7年末の在留外国人数も、412万5395人( 前年末比35万6418人、9.5%増)で、過去最高を更新するとともに初めて400万人を超えた(出入国在留管理庁発表データ)。
国内も国際化が進む中、政府は2023年4月の「教育未来創造会議」で、2033年までに外国人留学生を40万人受け入れ、日本人留学生を50万人送り出すとの目標を掲げ、海外に出る留学生を増やすため給付型奨学金などを拡充する提言をまとめた。学生の経済的負担を減らして留学を後押しし、グローバル人材のボトムアップを図るのが狙いだ。

官民協働で取り組む海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN 〜新・日本代表プログラム〜」も、2024年に給付額を増額。多くの大学が集まる東京都も短期・中長期の留学を支援する独自の奨学金「東京グローバル・パスポート」の支給を打ち出している。
国際系学部の志願者は増加傾向 国公立大学の国際化への取り組み
大学や学部によって差異はあるものの、18歳人口の減少を受けて多くの学部系統が苦戦を強いられる中、国際系学部への志願者はコロナ収束以降増加傾向にある。コロナ禍で激減していた志願者が回復、インバウンドの加速度的な増加によって航空会社や旅行会社、ホテルなどの観光分野でも求人・採用が増えるなど社会的・経済的な再活性化の動きが増加の一因にもなっていると考えられる。
国際競争力の強化が叫ばれ、世界と対等にわたりあえる人材を輩出していくために、大学教育も急速な変革を余儀なくされている。
東京都立大学は、文理の枠にとらわれない新たな学びを英語で提供する「共創学部(Faculty of Global Innovation and Development(略称:GLIDe))(構想中)」の2028年度開設を発表。定員75名のうち25名の留学生を予定し、4月入学に加えて、10月入学(秋入学)も実施する。また、東京大学では、2027年の秋入学で約70年ぶりとなる新しい学部、「UTokyo College of Design(カレッジ・オブ・デザイン)(構想中)」(学士・修士5年一貫プログラム)が開設を予定している。全授業英語、文理融合のカリキュラムを採用し、社会課題の解決や新たな価値を創造できる「チェンジメーカー」の育成を目標に掲げる。
さらに、東北大学では2027年4月に学士課程に置く特別教育プログラム「ゲートウェイカレッジ」が創設される。東北大学としては初の、学部を定めない新しい選抜制度により全体で178名を募集する。授業を英語で行うとともに、日本人と留学生の多様な学生が共に学ぶ国際共修環境で、新たなグローバル人材の育成に取り組む。
日本を知り世界へ発信する「国際日本学」という学び 成蹊大学は開設初年度で高倍率
国際系のなかでも、「国際日本学」を冠する学部学科が増えている。
明治大学国際日本学部や東京外国語大学国際日本学部をはじめ、多くの大学で、世界からみた日本の文化や社会を多角的に学び、世界と日本をつなぐカリキュラムが組まれている。2026年4月に新設された成蹊大学国際共創学部国際共創学科国際日本学専攻もその一つで、文理融合による学際的な学びが特長だ。
成蹊大学国際共創学部は、国際日本学専攻と環境サステナビリティ学専攻で構成され、文理の枠を超えた複眼思考を養う。グローバルな文化交流、共生社会、環境保全などの分野において、理論と実践、ローカルとグローバルを往復する学びを通して、現代社会の課
題に対する解決策を探究する。
成蹊大学 国際共創学部 国際共創学科 国際日本学専攻 寺本敬子准教授
国際日本学専攻では、イギリスと日本の大学でポップカルチャーを研究してきたポーランド出身のバラニャク平田・ズザンナ専任講師や、アメリカの大学で日本美術史の研究・教育に従事してきた平山美樹子教授など、豊かな国際経験を持つ教員が揃う。ポップカルチャーから美術、生活文化、異文化交流・比較文化、地域創生、共生社会、日本語教育など、多彩な分野を横断的に学び、グローバルな視野を養う。学部では専門分野を英語で学ぶ「グローバル科目」も開講される。また、海外留学も見据えてさらに高度な英語力を身につけたい学生には、全学部横断の選抜制プログラム「Global Study Program(GSP)」なども用意されている。
国際共創学部国際日本学専攻で異文化交流史・比較文化を専門とする寺本敬子准教授は「19世紀に開国した日本と諸外国の交流を通じて『ジャポニスム』という日本文化の一大ブームが生まれました。現在はマンガやアニメが、新たな文化的影響力を持っています。過去と現在の双方から学び、様々な社会課題を分析しながら、日本と世界の架け橋となるグローバル人材を育てていきたいと考えています。今年度は新設ながら、多くの意欲的な学生たちが集まり、大きな手応えを感じています」と話す。
開設初年度ながら、国際日本学専攻では、3教科(A方式)では、実質倍率9・0倍(志願者727)、2教科全学部統一(E方式)では、15・5倍(志願者896)と、高い関心を集め、多くの志願者が集まった。
知識を知識で終わらせない 経験や実践を重視するPBL型授業
予測困難といわれる今、学んだ知識をどのように活かしていくかが重要であり、そのために大学の授業も経験や実践を重視したPBL(Project-Based Learning: 課題解決型学習)型の授業が広がりをみせている。
2026年4月に新設された北海道の北星学園大学国際学部グローバル・イノベーション学科では、すべての学生に国際的な経験を必修化。短期・長期・インターンシップ・国際ボランティアなど個人に合わせて様々な選択が可能で、海外への渡航はもちろん、多くの外国人が来訪する日本の観光地にある外資系企業でのインターンシップなども経験できる。様々な文化や異なる価値観に実際に触れ発想力を高めていくのが狙いだ。
東洋大学社会学部国際社会学科や拓殖大学外国語学部国際日本語学科は、国内における外国籍住民の子どもの教育問題に取り組むなど、国際的な社会課題の解決に向けた活動を実施。大阪経済大学国際共創学部の国際共創プログラムでは、ベトナムの現地にてJICA(国際協力機構)や企業とともに、社会問題の課題解決にあたるなど、多くの大学で学生が自ら行動し、体験・体感することを重視し、新たな価値を創造するイノベーション思考を高めていく傾向にある。
- 1
- 2