「英語で」何を学ぶのか グローバル人材育成における語学教育の在り方

 AIで翻訳機能がどれだけ発展したとしても、人と人とが理解しあうためにはお互いに言葉を交わす必要がある。グローバル人材育成の基盤となる語学教育のスタイルは、大学により異なる。授業のすべてを英語で行う大学、学部学科もあれば、日本語と英語の双方で、あるいは学部学科によって英語のみで行う大学もある。

 国際的に通用する人材の育成に重点が置かれる中、もはや「英語を学ぶ」のではなく「英語で学ぶ」が主流となりつつある。言語の修得だけでなく、社会課題の解決などに主眼をおいた教育への流れができつつある。

 国際教養大学や立命館アジア太平洋大学のように、オールイングリッシュで学び、さらに少人数・留学生との寮生活といった、日本にいながらにしてグローバルな環境を整える大学もあれば、帝京大学外国語学部国際日本学科のように、1年次から4年次までの少人数によるセミナーで、留学生と日本の学生同士が英語と日本語を共通言語として互いに協力し、教え合いながら学び、異文化理解能力を身につける大学もある。

 「国際」という名前が付かなくても、グローバル化を視野に、オールイングリッシュで学ぶ大学や学部も増えている。また、英語での学位取得を有する学科も増えている。対象を留学生や帰国子女としながらも、日本の学生も科目として履修が可能な場合も多い。

理系の語学教育への取り組み グローバル化に対応する秋入学

 理系の語学教育への取り組みも進んでいる。名古屋大学の英語で学位が取得できるグローバル30(G30)国際プログラムは、理系も含む6学部10プログラムと幅広い分野が学べ、日本人学生も、留学生とともにG30向けの授業を学ぶことができる。

 東京科学大学(旧:東京工業大学)の融合理工学系では、多くの科目が日本語・英語の両方で履修することが可能だ。中央大学も2026年4月より、国際的に活躍する研究者の養成を目指し、基幹理工学部・社会理工学部・先進理工学部の共通メニューとして、高度な英語運用能力、国際基準のアカデミックスキル、多様な背景や価値観を持つ人と協働できるグローバルマインドを、各学科の専門的な学びを深めながら身につけられる理工学術院グローバル・プログラムを開始した。

 さらに注目すべきは、英語での学位取得プログラムをはじめ、海外からの留学生の受け入れを念頭においた学部学科では、秋入学へのシフトがみられることだ。企業の人材採用において、これまでの日本型と言われる4月入社だけでなく、世界中の学生を対象として秋も含めた通年採用に切り替えていく傾向がみられ、こうした流れは、大学教育にも影響していくことが予想される。

世界を体感するための様々な留学支援 大学ごとに独自性のある多彩な留学プログラム

 世界的な視野を身につけるための機会として、国際系学部学科では、留学を必修としている大学も少なくない。また、国際系学部以外でも個性的な様々な留学プログラムを展開している。

 千葉大学では、2020年度より「千葉大学グローバル人材育成〝ENGINE〟」をスタートさせ、多くの学部・研究科等において、学部学生・大学院生の全員留学の他、英語教育改革、スマートラーニングの実践強化を柱として、発信力・自己表現力・コミュニケーション力育成に取り組む。

 留学へのハードルを段階的に越えていくために、短期留学を経験して長期留学へのステップを踏む大学も増えている。昭和女子大学のようにボストンにある自学の海外キャンパスでの留学を経てから、長期留学へ進む大学もあれば、玉川大学観光学部では、2年次から3年次の1年間の海外留学が必修とされており、その期間内に大学付設の語学学校で必要な英語能力を取得後、各大学の授業に参加、さらに、留学後半で海外インターンシップなどの学外授業も体験できるようになっている。

海外大学の学位も取得するダブル・ディグリー制度

 大学での留学を検討する際、留学プログラムに加えて、交換留学のできる協定校の数や質も重要な指標となる。一般的には、留学に力を入れている大学ほど、協定校も多くなる傾向がみられ、正規の交換留学では費用負担も軽減できるからだ。

 数が多いのは早稲田大学で、協定校数は600に近い。立命館大学は500に迫る勢いだ。

 また、多くの大学が、留学して一定の条件をクリアすることで、留学先と日本の両方で学位が取得できるダブル・ディグリー制度を持っている。世界を舞台に活躍したい学生にとっては、日本の大学に在籍しながら海外の学位も取得できるチャンスがある。

 さらに、今後増えていくことが予想されるのが、ジョイント・ディグリー・プログラム(JDP)だ。2028年10月には、九州大学共創学部にJDPの九州大学(共創学部)・グラスゴー大学(社会・環境サステナビリティ学部)国際連携学科(仮称)が開設を予定しており、国内国立大学では初の学部レベルのJDPとなる。現在、学部レベルでは立命館大学国際関係学部のアメリカン大学・立命館大学国際連携学科のみだが、日本の大学と外国の大学が共同で教育課程を開発し、学生は海外と日本、双方の大学で学ぶ。1つの大学だけでは提供できない国際的にも優れた教育プログラムが受けられ、国際通用性の証明にもなる。

留学をあきらめないための様々な奨学金制度

 長引く円安や物価高が、留学の大きな壁となっている。「トビタテ!留学 JAPAN」も、留学準備金の増額を実施。また、日本学生支援機構の奨学金をはじめ、経団連グローバル人材育成スカラーシップや柳井正財団海外奨学金プログラム、業務スーパージャパンドリーム財団留学支援事業等の企業や団体による給付型奨学金など、厳しい中でも留学を実現するためのサポートは各種ある。それぞれに条件もあり、留学1年程前には応募・選考・決定するものが多いので、情報収集は早めにしたい。

 個別の大学でも、多くの大学が独自の奨学金などを設けて学生の留学をサポートする。

 関西外国語大学外国語学部国際日本学科では、所定の成績を収めれば受けられる、定員枠のない「給付型」留学奨学金を設置。フルスカラシップなら、留学先大学の授業料・住居費・食費まで給付される。

 目指す大学はもちろんのこと、希望する留学先の大学をはじめ、政府や自治体の支援制度なども調べて活用し、ぜひ留学を実現させてほしい。

 目まぐるしく変わる世界の中で、自ら考え、行動する力が、今求められている。国際系の学部で何を学び、将来どのように日本や世界に貢献したいのかを見据えて、様々な大学の情報を収集することが、自身の未来の選択肢を増やすことにつながってくるだろう。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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