東京大学大学院の関根渉助教らの研究グループは、犬インフルエンザウイルス(H3N2亜型)が、ウイルス表面のHAタンパク質に生じた2つの変異により、人型受容体への結合性を獲得し、人型細胞での増殖性が高まることを明らかにした。
犬インフルエンザウイルスは、北米やアジアの家庭犬などで流行を引き起こしているが、これまでに人への感染報告はない。研究グループは今回、犬インフルエンザウイルスが人に感染するようになる仕組みを探るため、人型受容体(α2,6結合型シアル酸)を優位に発現する細胞(人型細胞)と、遺伝子改変した制限増殖型ウイルス(ウイルスの増殖に必須なタンパク質を欠損させたウイルス)を用いて、連続継代実験を実施した。
その結果、人型細胞での増殖性が上昇した継代ウイルスを回収した。この継代ウイルスには、HAタンパク質に5つの変異(HA1-T138A, HA1-Q226L, HA1-K299R, HA2-E114K、HA2-K58R)が見つかった。そこで、各アミノ酸変異を持つPB2欠損ウイルスを作出し、人型細胞での増殖性を調べたところ、受容体結合領域に位置する2つの変異(HA1-T138A、HA1-Q226L)を持つ組換えウイルスでは、人型細胞での増殖性が大きく高まることが分かった。
また、これらの変異はα2,6結合型シアル酸への結合能を高め、その結合レベルはα2,3結合型シアル酸に対する結合と同程度になると判明。これらから、犬インフルエンザウイルスは、人型受容体に効率よく結合できる変異を獲得し得ることが示された。
今回の成果は、犬インフルエンザウイルスの人獣共通感染症としてのリスク評価に重要な知見を提供するとともに、将来的な人への感染リスクを早期に評価し、適切な監視に役立つことが期待されるとしている。

