東京大学と横浜国立大学の研究グループは、日本全国を対象とした「インパクトベース洪水被害評価」フレームワークを開発。台風経路のわずかな違いで洪水被害額が大きく変化し、被害が最大となる台風経路は地域で異なることが分かった。
従来のリアルタイム洪水予測は警報の発表、避難判断の支援、災害発生後の対応準備など主に短期的な意思決定に用いる。一方、インパクトベース洪水被害評価は水文気象情報に加え曝露・脆弱性に関する情報を統合し、洪水被害のリスクを総合的に評価できる。
研究グループは、近年日本に上陸した最強台風の一つ、2019年台風第19号(ハギビス)を対象に、統合陸域シミュレータ(ILS)※を用いインパクトベース洪水被害評価のフレームワークを構築した。
シミュレーションの結果、洪水被害額は台風経路の違いに非常に敏感で、経度方向に0.2度ずれるだけで平均約833億円の被害額の差が生じると判明した。
また、洪水被害が最大となる台風経路シナリオは地域により異なった。台風経路を1.0度東へずらすと、東京周辺を中心に関東地方と全国で最大の洪水被害が、一方、西へずらすと、1.6度では大阪周辺を中心とする近畿地方、0.4度では名古屋周辺を中心とする中部地方で最大の洪水被害が発生すると推計された。
堤防高を20%低くしたシナリオでは総洪水被害額が約1兆1891億円だった。20%高くしたシナリオでは約1兆1529億円に減少し、全体では約362億円の被害軽減に相当。堤防高を10%高くするごとに洪水被害額平均約91億円の減少が示された。
今回の成果により、極端降雨・洪水災害のリスク評価の高度化、洪水被害の軽減やリスク管理における科学的根拠に基づく意思決定の支援が期待されるとしている。
※陸面の水循環から河川流量、氾濫までを一体的に計算する水文・水理モデル

