日本女子大学大学院人間社会研究科心理学専攻博士課程後期2年の林真由佳さんと、同大学の藤崎和香教授は、映像と音の時間的なずれが、素材の性質と人の動作の質の知覚に異なる影響を与えることを明らかにした。本研究成果は知覚研究の国際学術誌「i-Perception」に掲載され、林さんは同誌の「若手研究者ベスト論文賞(Early Career Best Paper Prize)」を受賞した。
私たちは、目と耳から得られる情報を組み合わせて知覚している。例えば、食べ物を割ったり、物に触れたりするとき、物の見た目だけでなく、音も手がかりとして、「どのような素材に感じられるか(固い・柔らかい)」や、「動作がどのように感じられるか(熟練・未熟)」を判断している。
本研究では、映像と音のタイミングが一致せずに時間的にずれた場合に、素材の性質(固さ)や動作の質(熟達度)の知覚にどのような影響が生じるのかを検証した。
その結果、動作の質についての判断は、映像と音の時間的な対応関係に比較的よく沿って変化することが確認された。一方、素材の性質についての判断では、同じ時間的なずれに対する影響の受け方に大きな個人差がみられた。
さらに、最初の実験に参加した11名を約1年後に再測定したところ、その個人差の傾向が比較的安定していることが示された。このことから、映像と音の時間的なずれによって生じる、素材の性質に関する判断の変化には、個人ごとに特徴的なパターンがあることが示された。素材の感じ方には、時間的な対応関係だけでは説明できない要因が関わっていることが示唆される。
以上より、映像と音の時間的な対応関係が、私たちのさまざまな知覚判断に一様に影響するわけではないことが実験的に明らかとなった。すなわち、視覚と聴覚を組み合わせて対象を知覚するとき、何について判断するかによって、異なる情報を利用している可能性がある。
こうした知見は、私たちがどのようにして一人ひとり異なる「感じ方」を形成しているのかを理解することにつながるとしている。今後は、どのような視聴覚情報が素材の知覚や動作の知覚に利用されているのか、また、個人ごとの傾向が生じる仕組みを解明していく必要がある。
日本女子大学 人間社会学部心理学科は2028年4月に人間科学部心理学科(仮称)へ改組を構想している。「人間科学部(仮称)」は、現在の「人間社会学部心理学科」を前身とした「心理学科(仮称)」と、「家政学部児童学科」を前身とした「人間発達学科(仮称)」からなる1学部2学科で、同大学初の学部横断による新学部として、⽂理融合的な視点から人間を科学的に理解し、理論と実践を行き来しながら人間社会の持続的な発展に貢献できる人材の養成を目指す。
論文情報:【i-Perception】Audiovisual Temporal Asynchrony Differentially Influences Material Property and Action Quality Judgements: Evidence for Stable Individual Differences in Material Perception
DOI: https://doi.org/10.1177/20416695261495447

