順天堂大学医学部は、2020年9月28日、4年生の学生(137名)を対象に外国人診療の際に役立つ「やさしい日本語」の実習授業を実施した。医学部生たちが将来、医療現場において活用することを想定し、医学教育の一環として「やさしい日本語」を授業として取り入れるのは、国内の医学部において初めての試み(順天堂大学調べ)となる。

 「やさしい日本語」とは、難しい言葉を言い換えるなど相手に合わせて分かりやすく伝える日本語のことを言い、阪神淡路大震災で日本語に不慣れな外国人に死傷者の発生率が高かったことから注目されるようになった。外国人支援に活用されているほか、高齢者や障がいのある方、子どもたちなど、情報を得ることが難しい方々にも用いられている。

現在、行政窓口や生活情報の提供、観光の場面で効果を発揮してるものの、医療関係者への認知度は低く、2020年9月25日に文化庁から発表された調査結果では、日本に住んでいる外国人に対して半数近い人が『「やさしい日本語」で分かりやすく伝える取り組みが必要』と考えていることが分かった。

 このような社会状況を背景に、順天堂大学医学部では、「やさしい日本語」の授業を実施。「やさしい日本語」の成り立ちや必要とされるに至った背景を理解し、日本語を母語としない人々が医療機関を受診する際に直面する困難を認識するとともに、「やさしい日本語」で伝えるための工夫と「相手に合わせる」ことの大切さを理解することを目的としている。

 授業当日は、まず、医学教育研究室の武田裕子教授が、国内で「やさしい日本語」が必要とされる背景について説明し、実際に医療の現場で日本語を母語としない方が困る事例などについて紹介。その後、学生たちは、「常用しているお薬はありますか?」「精密検査が必要ですので、まず採血をしましょう」など、医療現場で頻出するフレーズを「やさしい日本語」に置き換える練習をした。また、日本語を母語としない外国人患者役の留学生に向けて、「やさしい日本語」で病態や処方の説明に挑戦し、留学生とのやり取りを通して得た“気づき”を発表し合った。

 学生からは『これまで“海外の人にも対応できるように英語を”と言われて学んできた中で、日本語を簡単にして伝えようとする「やさしい日本語」は目から鱗でした。実践してみたことで、人によって理解している言葉と理解していない言葉がバラバラなため、伝わり方にも差があることがわかりました。』といった感想や、外国人患者役を務めた留学生からは『わからない時は携帯で実物を示してくれたり、絵をかいたりと、回を重ねるごとに私にもわかる言葉を的確に選んでくれるようになりました。医学部で今回のような教育が行われていることを知ることができて、外国人の一人として安心しました』といった感想が聞かれた。

参考:【順天堂大学】順天堂大学が外国人診療に役立つ「やさしい日本語」を医学部の授業で初実施

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