北海道の北東部にある択捉島と国後島では、世界で唯一白い体のヒグマの生息が確認されている。しかしなぜこの2島にのみ白いヒグマが存在するのかは分かっていない。この原因について調べていた北海道大学、総合地球環境学研究所の研究グループは、択捉島のヒグマが北海道のヒグマに比べて実に3倍以上サケを食べている事実を発見。ロンドン・リンネ協会の学術誌「Biological Journal of the Linnean Society」 に掲載された。

 国後島で白いヒグマが発見されたのは2009年、その後の調査で生息が確認されているのは択捉島・国後島の2島のみである。また択捉島のヒグマは、北海道のヒグマに比べて体のサイズが大きいことも分かっている。
かつてカナダで行われた白いアメリカクロクマの研究によると、白いクマは日中は水中の生物から見つかりにくく、黒いクマよりもサケ捕獲成功率が高いという。ここから択捉島のヒグマにも、サケを多く食べることがヒグマの体色やサイズと関係するのではないかと予想されていた。

 そこで同研究グループは、北海道大学植物園に所蔵される20世紀前半の択捉島のヒグマの頭骨を構成する元素を分析。そこから何を食べているか推定し、北海道東部のクマと比較した。その結果、北海道のヒグマの食物に占めるサケの割合が8.2%だったのに対し、択捉島のヒグマは27.3%と、サケに強く依存する食性であることが判明した。

 しかし、択捉島と同じくらいサケを多く食べるヒグマ個体群が存在する北アメリカでは白いヒグマは確認されていない。従って白いヒグマが生息する理由を「サケを多く食べる」ことだけでは説明できないが、サケを捕獲するのに有利な体色の個体が生き残りやすかったという可能性はある。今後は謎を完全に解明するために、ヒグマの食生態に関する研究や、どのような遺伝的背景があるのかといった個体群生態学的な研究を進めていくという。

大学ジャーナルオンライン編集部

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