岐阜大学の研究グループは、心理的ストレスによって排便が誘発される際、脳から大腸へと至る神経経路を明らかにした。
 
心理的ストレスにより腹痛や下痢、便秘が起こるように、ストレスが排便異常を引き起こすことはよく知られている。しかし、脳で生じたストレス信号がどのような経路を通って大腸に伝わり、排便に影響を与えるのだろうか。

 本研究では、ラットを水に囲まれた空間に置くことで心理的ストレスを与える「水回避ストレス」と呼ばれる手法を用いて、排便制御に関わる脳領域である延髄縫線核へストレス信号を入力する神経経路を探索した。

 その結果、ストレス中枢として知られる視床下部室傍核(PVH)および視床下部背内側核(DMH)から延髄縫線核へ至る神経経路を同定し、心理的ストレス時にこの経路が活性化することを見いだした。さらに、遺伝子技術を用いてこの経路を選択的に抑制すると、ストレスによる排便が減弱することも確認された。

 また、これらの視床下部領域を活性化させると、大腸運動が亢進することも明らかとなった。このことから、PVHやDMHには大腸運動を制御する神経が存在すると考えられたため、その仕組みを調べたところ、視床下部からのオキシトシン入力、脊髄でのセロトニン受容、骨盤神経などが関与していることがわかった。

 以上より、心理的ストレスによる排便には、ストレス中枢から大腸を結ぶ神経伝達路(視床下部―延髄縫線核―脊髄排便中枢―骨盤神経)が働いていることが示された。

 本研究は一過性の心理的ストレスによる排便促進の神経回路を示したが、今後は慢性的なストレスによる排便異常のメカニズム解明も課題だ。将来的には、過敏性腸症候群(IBS)などのストレス性排便異常の病態解明や、「脳腸相関」(脳と消化管が互いに影響し合う仕組み)の理解につながることが期待される。

論文情報:【Communications Biology】Involvement of the hypothalamus–raphe magnus–spinal defecation center axis in stress-induced defecation in rats

岐阜大学

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