宇都宮大学の芋川 玄爾特任教授らの研究チームは、角層脂質「セラミド」の欠乏が、アトピー性皮膚炎(AD)発症の直接的原因であることを世界で初めて実証した。
アトピー性皮膚炎患者では皮膚のセラミド量が低下していることが知られていたが、それが「結果」なのか「原因」なのかは未解明だった。今回、この長年の疑問に直接的に挑んだ研究が実施された。
研究チームは、セラミド分解酵素「酸性セラミダーゼ(aCDase)」を表皮で過剰発現させたトランスジェニックマウスを作製。その結果、生後早期から重度の乾燥・鱗屑(りんせつ)著明なバリア機能低下と水分保持能低下、角層セラミドの大幅減少、表皮神経増生と神経抑制因子Sema3aの低下が確認された。さらにダニ抗原刺激により、好酸球浸潤、血中IgE上昇、Th2 関連分子(Ccl17、Ccl22、Il13など)の著明な増加が生じた。一方、正常マウスではほとんど反応は見られなかった。
今回の研究は、セラミド欠乏 → バリア破綻 → 神経過敏 → Th2型炎症という一連の病態進展を実証した。これは「炎症が先でセラミドが減る」のではなく、“セラミド不足こそが炎症を引き起こす出発点”である可能性を強く示すものという。
研究チームは、この成果がアトピー性皮膚炎の「outside-in仮説」を強く支持し、皮膚脂質代謝異常が免疫環境を規定することを明確にしたとし、さらに、病態を再現する新規モデルの確立により、創薬研究の強力な基盤が整ったと述べている。今後は、セラミド補充療法の科学的裏付け、酸性セラミダーゼ阻害戦略、かゆみ制御型スキンケア早期予防介入法の開発への応用が期待されるとしている。
