森林研究・整備機構森林総合研究所、鹿児島県森林技術総合センター、岡山理科大学、アメリカ合衆国国立公園局、ボストン大学の研究グループは、開花に必要な低温刺激が不足した場合、「染井吉野」に生じる開花異常の症状を詳細に解明した。
近年の気候変動による温暖化で「染井吉野」(エドヒガンとオオシマザクラとの種間雑種の「栽培品種名」)の開花日が、東京では過去100年間で約2週間早く、生育南限地の鹿児島では逆に遅くなっている。開花に必要な低温刺激の不足が原因とされるが、影響の詳細は不明だった。
そこで研究グループは、鹿児島地方気象台で観察された染井吉野の満開日の記録(1965~2024年)について、熊本地方気象台と比較し、積算チルユニット値(cCU:低温刺激の指標)との関係を分析した。
その結果、鹿児島のcCUが低いと熊本より満開日が遅くなり、低温刺激不足による開花遅れが確認された。また、鹿児島県内9カ所の調査地で開花状態を観察(2022~2024年)し、正常な開花が見られた熊本・岡山の調査地の開花状態と比較した。cCUが1500を下回ると、開花が遅れ、個々の花の開花日がバラつき、生育不良による花芽落下によって、木全体の開花している花数の減少が確認された。
特に2024年の開花している花数は、鹿児島市(cCU:1151)で最大34%、屋久島町(cCU:393)では0%だった。cCUが低いと「満開とならない」開花となり、観賞価値が大きく損なわれることが分かった。
この成果は、身近な樹木が気候変動のモニタリング指標として活用でき、将来のお花見のために暖冬の環境に適応している地元産のサクラを育成するなどの対策が必要であることを示しているとしている。
