2026年度から文科省が制度化 学士・修士「連続課程特例認定制度」
2026年2月、大学設置基準等の一部改正があり、「大学院(法科大学院及び教職大学院を除く。)を置く大学は、連続課程の編成により効果的な取組を行うため特に必要と認められる場合には、文部科学大臣の認定を受け、修士課程の標準修業年限又は在学期間の短縮に関する特例の適用を受けることができるものとする」となった。
大学及び大学院(修士課程)の在学期間
修士修了に不可欠な「30単位以上」の修得要件に変更はないが、学士・修士5年一貫教育制度の導入を希望する大学は、2種類の特例からいずれかを選択して運用することになった。
1つは「修士課程の標準修業年限の短縮」。これは、学部で4年間学び、修士課程の標準修業年限そのものを1年に短縮されるというもの。もう1つは「修士課程の在学期間の短縮」。こちらは、学部段階で大学院の単位を先取り修得し、その単位数を勘案して修士の在学期間を1年に短縮するというもの。
2つのうちどちらかを選択して文科相の特例認定を受けることで、学士・修士5年一貫教育制度をはじめることができるようになる。
2つの特例モデル
2027年秋、東京大学が5年制の新課程を新設
2027年9月に東京大学は学士・修士の学位を5年間で取得する文理融合の全英語プログラムである「UTokyo College of Design」が新設される。この学部のように学部と大学院の「連続課程」であり、入学時に学生募集を行うことで、今後は、学士・修士5年一貫教育制度の認知が広がっていく可能性が出てきている。
博士号まで一貫で学ぶ 理系大学院の実施例
前述したように、5年一貫教育制度を導入するのは文系の学科・研究科が多くなっているが、理系はどうなっているのだろうか。理系ではもともと、自身が希望する研究に取り組むために大学院修士課程に進学する人が一定数いた。そのため学士から修士までの6年一貫教育を前提にしている大学も多い。
宇都宮大学は2026年度から「総合型選抜A(特別)未来デザイン型入試」を実施。工学部と農学部で行われる入試で、合格者にはさまざまな特典が用意されている。工学部オリジナル特典のひとつが「6年一貫教育プログラム履修生としての登録」。工学部では「新6年一貫教育(仮称)」を整備しており、一定の条件を満たすと3年次後期からの卒業研究着手や、4年次の大学院科目先取履修が認められる。先取履修により空いた時間は、長期インターンシップや留学にも活用可能だ。在籍期間が短縮されるわけではないが、研究と留学、もしくは就活を両立しやすくなる制度だといえよう。

理系学部では、さらに博士課程への進学も含めた「9年一貫教育」を導入する事例も見られる。
九州大学は2027年度より「次世代博士人材育成コース」を設置予定。大学入学後すぐに研究室配属や研究インターンシップが行われ、早期から専門性の高い内容に触れられる。ただし選択できるのは所属学部・学科の研究室のみだ。
博士号取得までの在学期間に大きな短縮はないものの、研究に充てる時間が増えるカリキュラムを用意。専攻教育科目の先取履修、入学前教育、英語外部試験のスコアに応じた単位の認定などが予定されている。もし早期に卒業・修了要件を満たし、成績優秀な学生の場合は、9年未満での卒業や修了も可能だ。
コースに参加するには、高校時代に「九州大学未来創成科学者育成プロジェクト(QFC-SP)」に参加したのち総合型選抜「次世代研究者発掘入試」に合格して入学するか、在学中に学部1〜3年生を対象にした編入試験に合格する必要がある。学部生だけでなく、高校生にも博士号取得を意識してほしい、という意図が感じられる制度だ。
奨学金、内部生へのインセンティブ 大学院進学を支援するために
理系大学院進学をめざす際、ネックになるのが学費だ。理系学部では独自の奨学金を出していることも多く、金銭面での負担を軽減できるよう努めている。
宇都宮大学の場合、未来デザイン型入試合格者は入学金が全額免除される。九州大学の次世代博士人材育成コースでは、学部・修士課程のコース生に年間50万円の奨学金を支給。博士課程の学生に対しても、別途支援制度を用意する。
文系理系を問わず、修士号や博士号を持つ人材を増やしたい、という国の方針はしばらく続いていくだろう。それに伴い、奨学金や、5年一貫教育制度をはじめとする内部進学者へのインセンティブも拡充されていくかもしれない。せっかく大学で学ぶのであれば、大学院進学も見据えて進学先を検討してみるのもよいだろう。
5年一貫教育制度に関しては、大学・大学院での学びや研究が中途半端なものにならないよう、教職員のサポートやカリキュラムの設計も欠かせない。やみくもに修士号を与えたところで、「高度な専門性を身につけた人材を増やし、国際競争力を高める」という国の狙いは達成できないだろう。
ほかにも就職活動とどう折り合いをつけるのか、大学側は学生の在籍期間短縮による減収をどう補うかなど、5年一貫教育制度にはいくつもの課題がある。それでも大学院進学を当たり前のものとするためには、ときに大胆な改革に着手し、社会全体で修士号・博士号取得者が活躍できる土壌を整えていくことが重要だ。そのための取り組みは、一朝一夕では為しえない。大学や大学院を取り巻く環境が今後どう変化していくのか、注視してみてはいかがだろうか。
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